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第三章雇われ国王物語
閑話10正当な跡継ぎ③
しおりを挟む暴れまわるマリアンナを無理矢理部屋に押し込むことになった。
残された彼等は…
「お姉様、やはり許してくださらないのですね」
「彼女の許しを得る必要はない」
そもそもフレデリカが養子に出されたのも、マリアンナが王太子妃候補に選ばれたのだから。
どう考えてもフレデリカに一切の非はないのだから。
「お姉様に良く思われていないのは血筋の所為だと思っていたのですが、ここ最近のお姉様はなんというか」
「ああ…いえ、申し訳けありません」
エクトルの前でマリアンナを侮辱する発言をした事を詫びるも。
「いや、私もそう思ってた。あの子が変わり始めてから…」
「はい、マリアンナが高熱で倒れてからです」
それまで少しだけ利発だっただけで特別な存在ではなかった。
優しく素直で少し意地っ張りなマリアンナはあの日に変わってしまった。
「私は昔のあの子に戻って欲しい」
「叔父上…」
「完璧な淑女にならなくても良い。優しく思いやりに溢れたあの子に戻って欲しい。今の私はあの子を娘として見れなくなってしまっているんだ」
ここ最近はその思いが強くなっている。
「悪い物に取りつかれたのでしょうか」
「ニコルお兄様…」
「私は完璧でなくとも優しかった彼女の方が好きです」
妹のように思っていたマリアンナはもう何所にもいない。
面影すらなくなった事を悲しく思うニコルにエクトルは何も言えなかった。
今優先すべきはマリアンナではないからだ。
「フレデリカ、今は自分の事を考えなさい」
「お父様…」
「お前は私の後を継がなくてはならない。グレタ王女殿下が正式に立太子する事になった。我らは王家を守る立場にある。その意味は解るな」
「はい」
王族派は今こそ貴族派の勢いを抑え込み国を一つにしなくてはならない。
「エリンデール王国と同盟を結び、後に従国となるだろう」
「え…エリンデールのですか?」
小さな島国であるエリンデール王国と同盟を結んでも従国となるとは考えにくい。
「それ程国が困窮しているのですか」
「ああ…このままでは」
エリンデール王国が傾きつつある最中。
新しく改革を行い新たな国として生まれ変わる為の苦渋の決断だった。
「お前は今後殿下の為に尽くさねばならん。良いな」
「はい、お父様」
王家を守るのがフルーデルト家の役目なのだから君主の決定に逆らう事は出来なかった。
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