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第三章雇われ国王物語
閑話9鈍感な男
しおりを挟む昔から聡明と思ったら自分の事に関しては鈍すぎた。
「あの男は昔からそうだったわ」
「姫様?」
思い出すだけでイライラしながらもポッポがいるのにも関わらず過去を思い出しながらイライラした。
「乙女心を全く理解してないのよ」
「えっ…えーと」
「二人きりで会う時もあの男は、図書館で国に関して語り合おうですって?いくら何でもないでしょ?」
幼い頃勇気を出して気持ちを伝えようとした事もある。
二人きりでデートをしたけど本人には全く気付かれることはない。
「夜に図書館でデート?ないわ」
「昔からズレてたんですね」
ここまでとは弁護できなかった。
乙女心を全く理解していないと言われても仕方ない。
「婚約中も、婚約者にあそこまで馬鹿にされて文句も言わずに自分が悪い?見下され男としても失格だと言われているのに気づかず。私に恋愛相談を持ち掛けるのよ!」
「ひっ…姫様」
「私はエラ程大人しくないわ!」
何が悲しくて思いを抱く相手の恋愛相談を受けなくてはならないのか。
聡明で慈悲深いエセリラとは違い癇癪を起してしまった事を思い出すが、フィルベルトにも問題もある。
「昔から乙女心が解らない人だったんですね」
「しかも本人は悪気がないのよ。私と親友を手玉に取っている自覚がない」
「はい?」
(何やってるんですか!)
ポッポは眩暈がした。
リーシェの口ぶりからしてもう一人いるのだと知る。
「どなたですか?」
「ルーティン帝国の皇女」
「あー…」
もう目の前が真っ暗になる。
ルーティン帝国には二人の皇女がいるが、なんとなく察した。
「頭が痛い」
「私の気持ちも彼女の気持ちも知らないわ。フィルには婚約者ができたら潔く諦めようとしたけどあんなのだし」
リーシェは自分の立場を理解していた。
いかに友好国であっても王女である故に他国に嫁ぐ選択は難しい。
「彼女のように聡明な女性なら納得できたのに」
「そうだったんですか」
ポッポはリーシエがあまりにも気の毒になった。
だが今の状況を考えると。
「既成事実を作る方法は…」
「できるわけないでしょ!そんな野蛮な事!」
「そうですか」
ある意味ではリーシェもフィルベルトと似たか寄ったかではないか?とも思った。
無理強いをすることなく、相手の気持ちを尊重するが自分の気持ちは後回しになっている。
「姫様は、もう少し我儘になってみてはどうでしょう」
「えっ…」
「フィルベルト様はこんな無茶な事を引き受けません。それに押しが弱いです」
「まぁ、そうね」
「姫様、僕が協力します」
ポッポはフィルベルトに相応しいのはリーシェだと思った。
それに二人は強い絆がある。
今後の為にも二人が仲睦まじい関係を結ぶのは必要だと思ったのだった。
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