悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!

ユウ

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第三章雇われ国王物語

10リーシェ王女

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乱暴に扉が開かれ、現れたのはリーシェ王女が現れた。


「ごきげんよう、王女殿下」

「何を呑気にお茶を飲んでいるのよ!貴女、解っているの」

「そんなに怒ると美容に悪いぞ」


完全に興奮しているリーシェ王女の怒りを抑えるのが先だ。
ここは感情的にならずに冷静に話し合うべきだ。


しかし。


「父上、この手紙は何です。隣国の王太子殿下を婿に貰うだなんて」

「リーシェ、落ち着いておくれ」

「そうですよ。何をそんなに怒っているのかしら」


いや、この状況でそれはないだろ。
幼少期の頃からこの微笑みに何度騙されたか。

母上も笑顔の裏で扇を握り潰していたのは片手で数えきれないな。

エリシェ様の笑顔に底知れぬ恐ろしさがある。


「私が言いたいのはですね!」

「これは両国の決定です。貴女に拒否権はない…とは言っても、今後の事に関しては二人に任せます」

「母上」

「では参りましょう貴方」


「うっ…うむ」


笑顔で有無言わせず勝手に片付けたな。
そのままスタスタと去って行く両陛下に置いて行かれた。



こうなったら…


「レック、他の皆と共に席を外してくれ」


「フィルベルト様」

「大丈夫だ。後は俺達で話し合う。大勢では話もできない」


視線をナツメに向けると頷いてくれた。


「では失礼足します」


「はい…」


そう言いながらナツメはステラの手を引いた。

「ちょっと待ってください。引っ張らないでください」


「いいから行きますよ。我々がいてはなりません」


ステラに対して多少は雑だが、二人きりで話をする為には致し方ない。
毒舌であるが、女性に乱暴はしない。

しないと願いたい。
でも言葉が少しキツイからステラが泣かないと良いけど。



「それで何なの?」

「まぁ座れ、俺よりも君の方は100倍は強いから危ないのは俺の方だ」

「あのねぇ!」


リーシェが怒るのも仕方ない。


「同盟を結ぼうじゃないか」

「は?」

「君は国を守りたい。俺も同じだ…だが、現状は難しいので互いに利用できる物を利用しよう」


両陛下にも許可は頂いた。
ただあの二人よりもリーシェの説得の方が難しい。


両陛下は時の流れに身を任すとは言っている。
それはつまり、一緒に苦楽を共にすれば愛情が芽生えると思っていたのだろうけど。


「情けない話、俺は祖国にとって邪魔だ。自分の身を守る事も出来ない立場だ」

「は?」

「君はこのままだと欲望しかない最悪な王族、もしくは貴族と結婚しなくてはならない。だから俺が表向き王になり国が立ち直った後に俺は王位を譲る」


「貴方正気なの?そんなことをしたら」

「静かにひっそり暮らすさ。心配なら監視をつけても良い」


幸いにもエリンデール王国は気候に恵まれ、老後生活にはぴったりだ。


「貴族も平民も飢えで苦しむことがないようにしよう…そう言っただろ」


「フィル・・・」


あの日誓った言葉。
三人で約束したあの言葉に嘘偽りはない。


「解ったわ」

「ありがとう」


リーシェの最優先は国と民だから、卑怯な言い回しをして説得する事に成功した。


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