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第一章廃嫡と婚約解消
プロローグ
しおりを挟む豪華絢爛なシャンデリア。
全校生徒が集まる中で俺はその注目の的だった。
何故なら今日が貴族学園の卒業パーティーだ。
ここで行われるのは。
「マリアンナ嬢、今日を以って君との婚約を解消させてほしい」
「は?」
「私はこれまで君に最低な真似をした。君という婚約者がいながら他の女性と親しくなった…その所為で君は彼女につらく当たり、私は随分君を責めてしまった」
「なっ…何を」
「この国を背負う者としてはあまりにも未熟だ。私は廃嫡とし、しかるべき処分を受けるつもりだ」
本来ならば悪役令嬢の断罪だった。
物語では時季外れに転校して来た平民の少女と思いを寄せながら婚約者を捨て真実の愛を貫く王道的な物語だが…ないだろ?
婚約者がいながら真実の愛?
不誠実の愛の間違いだ。
前世の記憶を取り戻したのが断罪イベント三秒前ってどんな無理ゲーだよ。
既に俺の選択は悪役令嬢を断罪するか、それとも俺が断罪されるかだ。
ならば断罪されよう。
だって悪役令嬢はちゃっかり恋人が傍でがっちり守っているんだから。
「フィルベルト殿下…何を。正気ですか」
「ああ、私はずっと優秀な君に劣等感を抱いていた。言い訳にしか聞こえないが、王太子とは孤独な物だ。私は孤独に耐えきれず逃げた…」
「兄上!王族としての責任を果たさないつもりですか」
「私は王になる資格はない。だからアルセウス…もう私に遠慮しなくても良いんだ」
そう、悪役令嬢には好きな男がいた。
俺の弟であり第二王子のアルセウスだった。
生まれる順番が違うだけで、誰よりも優秀だった。
マリアンナも俺といる時は笑いもしなかったが、アルセウスと一緒にいる時は幸せそうだった。
だからこそ、二人の恋を応援する。
「皆、これからは第二王子のアルセウスが王太子となるだろう。私がこんな事を言う資格はないが、どうか新たな王太子を支えて欲しい。そして今まで申し訳なかった」
「そんな…」
「フィルベルト殿下!」
皆動揺している。
今まで随分な態度を取っていたのだから。
婚約者がいながらこんな不誠実な真似をした王子でも、いきなり卒業パーティーでこんな事をされたら迷惑かもしれない。
「マリアンナ、どうか幸せに。今さらだが君の幸せを心から願っている」
あんな酷い仕打ちをしてこんな事を今さら言えた義理ではないが、どうか愛する人と幸せになって欲しい。
そして一番の被害者である彼女を――。
「フィルベルト様!」
「すまない。最後まで君を苦しめ守ってやることもできない弱い男で」
「いいえ…いいえ!」
一番の被害者は彼女だろう。
親しくしていても恋人のような関係ではなかった。
恋人未満友情以上だが、どれだけ苦しめたか。
「せめて君だけでも…」
「私も一緒に」
「それはできないんだ。廃嫡になった王族がどんな惨めな生活を送るか。君をこれ以上巻き込みたくない」
これは本音だ。
前世の記憶を取り戻したからじゃない。
マリアンナとの婚約に疲れていた俺は憔悴していた。
そんな中助けてくれたのはステラだった。
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