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第二章新生活
15.会場で遭遇
しおりを挟む夕暮れ時、招待客が浮足を立てながら邸に入っていく。
ホスト役でもあるマーガレットは出迎えをするべく大忙しだった最中、リーンハルトは持ち場を離れてパーティー会場に出て来ていた。
仮装する服がないので白衣のままだったが、会場には料理人が料理の追加を運んだりしているので不審がられることはなかった。
(フン、所詮は真似事か)
マーガレットの主催するパーティーの規模は王宮で催されている物に比べれば質素だった。
料理にお酒にお菓子なども庶民的だと思いながら、乾いた喉を潤す為にシャンパンを飲みながら会場を好き勝手に歩く。
(飲めなくはないが、俺の飲むものではないな)
王都を追い出されてからというもの、真面に食事した記憶はない。
日雇いの仕事でも食事は出るのだが、これまで贅沢な食事をして来た所為で平民が食べるパンやスープはまずくて口に合わなかった。
この邸で出される食事は良い方なのに文句ばかり言って賄いを作る料理人達を怒らせてしまっていた。
パーティーの料理だから多少は期待したが、食べながら文句をぶつくさ言う始末だ。
「所詮は平民如きが考えるパーティーか。ワインや肉が少ないじゃないか…オードブルもショボすぎる」
文句を言いながらも、味は悪くなかった。
特にワインと一緒に添えられているスイーツの味が悪くなかったので手が止まらずにいた。
「こんなしょぼいパーティーをしてなんの意味があるんだ?来ている連中も成金の集まりだろうに…アイツらは馬鹿なのか?」
シャンパンをぐいぐい飲んでいると、奥のテーブルで一人の料理人が少女にケーキを切り分けている姿が目に入る。
後ろ姿だけで最初は誰か解らなかったが、すらりと背が少し高く、美しい金髪の髪がに立ち姿が美しく感じた。
(平民にしては悪くないな…)
柱の陰に隠れながら、リーンハルトは退屈しのぎに近づこうとした。
「お嬢さん」
「はい?」
憂さ晴らしにナンパして遊んでやろうとも思い、声を掛けようとした。
「良かったら僕と…」
「リーンハルト様!」
「なっ…コーデリアか!」
振り返った拍子に名前を呼ばれ唖然とした。
仮面をつけているが、すぐにコーデリアと解りリーンハルトは声を上げた。
「なっ…どうしてここに!」
コーデリアはうっかり仮面を床に落としてしまった。
真っ青な表情をしながら逃げ腰になるコーデリアの態度を見てこれまでの苛立ちがこみあげて来た。
(何故こんな所に…俺が惨めな思いをしていると言うのに!)
拳を作り、リーンハルトはコーデリアを殴ってやりたいと思った。
しかしここである考えに至った。
(いや、待てよ…ここでこの女を連れ帰ればいいのではないか!)
考えが浅はかなリーンハルトはコーデリアと寄りを戻しさえすればすべてを取り戻せると思い込んでいた。
そんな真似をしても意味がないのに、自分の都合のいいようにしか考えていなかった。
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