聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!

ユウ

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141心に忍闇の声~ジャネットside

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物心つく頃から聞こえた声がある。

お祖母様に叱られ、一人で狭い部屋に辻込められた時に誰かに言われたの。


『お前は恨んでいい…お前は悪くいない』


その時はすぐに忘れたけれど。
成長して社交界デビューをしてから時折声が聞こえた。

まるで心に黒い花が咲くようにこの声を聞くと私は怒りを増長させた。



「地面に黒い百合の花?」

「これは聖花じゃない…むしろこの花は!」


聖花と似ているようで非なるもの。

そうだわ。
この花が咲いていて、私は…



「私が心を病んだ時、必ずこの花が咲いていた」

「何だと!」

「殿下、これは聖花とは真逆の存在です。花から強い負の魔力を感じます」



この声を聞くと私は心をコントロールできなかった。


そう…


「私は一人になると、この花に囁かれたわ。私は愛されない…サーシャだけが愛されると」

「悪魔の花です」

「マリア様、どういうことですか」

「この花は人に悪意を植え付けるんだよ」

傍にいた老婆が眉をしかめて告げた。

「自称聖女」

「誰かが自称よ!」

「じゃあもどきでいいよ。アンタ、この花に良くないことを吹き込まれたんだよ…人間誰しも悪意や闇を持っているもんだ…だけどね、そう簡単に悪意を表に出さないよ」


不愉快極まりない老婆だけど、言っていることは納得できる。


「アンタが攻撃的になったのはこの花が影響しているんじゃないか…聖女候補なら悪魔の依り代にちょうどいいからね?」

「そんな…じゃあ私は」

「まぁ、アンタの心に小娘に対する嫉妬心はあったんだろう。だけどまがりなりにもアンタは聖女候補だ…自制できたはずだが、できなかった。いいやさせなかったんだよ」


私は利用されたの?

聖女になる事が私の唯一の道と信じて…

だから死ぬ気で頑張った。


「まだ物心をつく前に過酷な環境に置かれたのも原因の一つだ。そこに悪魔の花が囁く…これ以上の最悪な条件はないよ。まぁアンタの本心は私には解らない…ただ」


「ただ、何です」


「本気で小娘が憎いなら、男に襲わせたり呪い殺したり、食事に毒を盛る行為もできたはずだ」

「なっ…するわけないでしょう!」


いくら何でもそこまで非道な真似をするなんてありえない。


「小娘の対外だが、アンタもつくづく甘いね…私だったら骨ごと燃やしてやるよ」

「は?」

骨ごと燃やすって何?
なんて恐ろしい事を言うの?


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