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130小さな影~伯爵夫人side
しおりを挟む妙だわ。
結界を新しく敷いて、瘴気はすべて浄化できたのにこの違和感は何?
聖花も満開になった。
けれど風の動きが早すぎる。
「シュリ」
「お婆様」
私が一人塔に上り、空を見上げていると声をかけられる。
「瘴気が完全に浄化できていない」
「ええ…というよりも」
「やはり気づいたか。一度浄化した瘴気がまた風に隠れて侵入している」
そうだわ。
浄化は一度された。
だけど瘴気。
特に負の感情が強ければ強いほど瘴気は消えない。
特に魔の力が強ければ。
「一体どういうことなのでしょう」
「聖女の結界により瘴気は浄化したのは確かだよ。だけど人の心の闇は深い…その闇を完全に消すことは誰にもできやしない…と言いたいが」
「いくら人間の闇の部分が強くても具現化するのには時間がかかる。それに封印を破るのは不可能ですわ」
「ああ…聖女とあの小娘の力で封印は完璧なものとなった」
「はい」
完全に封印ができなかったとしても今生では悪魔の依り代がない。
そうなれば幽霊のようなもので、この国の地を汚す力はない。
新しい結界を敷かれたのだから。
「ただ例外がある」
「例外?」
「本来悪魔の依り代になる人間が相当な憎しみを持ち、何らかの形で覚醒したとすれば厄介だ」
悪魔の存在は詳しく書かれていない。
ただ不敵に人の身に降りて力を得ると聞かされている。
「悪魔は基本、依り代がなければ好きに動けない」
「その依り代が現れた?」
「可能性がある」
歴代の中では聖女だったにも関わらず悪魔が接近して、聖女から魔女に変わった過去がある。
だけど詳しく書かれていない。
「聖女と魔女は似ているからね」
「正反対では?」
「いいや、聖女も魔女も同じだ」
女神から力を与えられた聖女。
この世に災いをもたらす魔女。
相反する存在であるのに、同じだなんて。
「封印は強度にされたが、このタイミングで悪魔が地上に現れた場合」
「月食の時、魔力が強まります」
このタイミングでもし儀式の場に現れたら?
元の世界に帰る際に異世界の扉を開くことになる。
その時に、聖女の結界は一時的に弱まる。
そこを狙われたら終わりだわ。
「どうする」
「それは…」
「もう時間がないよ。思いたる女がいるんじゃないか」
お婆様の事に私は口ごもった。
そうだ。
悪魔の依り代になりえる人物が一人いるのだ。
外れて欲しいけど。
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