聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!

ユウ

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128膨れ上がる感情~ジャネットside

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新たな聖女の誕生を喜ぶ声は王都から離れたこの地まで届く。
耳を塞ぎたくても、嫌でも聞こえる。

噂は私の耳にも。


あの女が真の聖女として王都を守り、聖女として役目を果たしたと。
誰もが異世界の女を褒めたたえる声は私を苦しめた。


かといって私は牢獄に入れられたも同然だった。


「失礼します」


一日に三回、侍女が食事を運んでくる。
特に会話をすることもなく、私は視線を合わせない。


事務的な会話をしながらも私を見ていない。
あんな身分の低い女にまで蔑まれてしまうなんて。


そんな中。
何時の日だったか、侍女達が浮足を立ててながら話している声が聞こえた。


私は特に気にも留めずにいた。


だけど――。


邸前に泊まる馬車の数に、人の出入りが少ないはずなの商人の出入りが多くなった。


「本当に素晴らしいですわね」

「ええ、この首飾りは…」

「こちらの髪飾りはどうしますの」

「そっちは」


浮足立つ使用人に、入れ替わり立ち代わり宝石商人の出入りが多かった。


もしかして私に?
謹慎中の私を哀れに思ったお父様が…


「どれも素晴らしい品ですわ。サーシャ様にお似合いですわね」

「ええ、モニーク家が最高の品を用意してくださったとか。ヴェールは奥様の物をリメイクされるとか」

「新品が主流ですが、本来は母君のおさがりを使う方が幸せになれると聞きますし。奥様も張り切っておられましたわ」

「本当にようございましたわね」


「サーシャ様の結婚式は…」


ドクン!


サーシャの結婚式?

「聞けば、その結婚式で聖女様の結婚式も合同で行われるそうで」

「サーシャ様の粋な計らいですって」

「本当にお優しい事」


あの女も結婚式もするって何?

私は何が何だか解らずにいた。


「王太子殿下と聖女様は愛し合いながらも立場上難しいですものね…だからせめて永遠の愛をあの神殿に誓わせて差し上げるそうですわ」

「なんて素敵なのかしら」

「大事な結婚式なのに…サーシャ様は天使のようにお優しい方」


ジワリと胸の奥に黒い影が…


――許せない。


あの女がすべてを奪ったのに幸せになるなんて。


同時にもっと許せないのは。



「私をこんな目にあわせて…すべてはサーシャの所為なのに!」

唇を噛み締めながら血が出るのも気づかなかった。


憎くて仕方ない。


何の価値もないくせに周りに守られて何一つ努力もしないで楽をして持てはやされて。


「本当は私があの場所にいるはずだったのに!」

聖女の地位を奪って、フレディー様までも奪うなんて…

そんなこと許さない!


「そうよ。聖女の座を奪ったのなら…」


私から大事なものを奪ったのならその対価を支払うべきなのだから!


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