聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!

ユウ

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124素直な気持ち~ルミエルside

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私は馬鹿だった。
マリアの為だと言い聞かせながら私自身が傷つきたくなかった。


「君がいなくなった世界で生きていくのが辛かった。だから蓋をした」

「殿下…」

「名前で…今だけでいい。名前を呼んでくれ」



心を殺してきた私は麻痺していた。
だが、欲を捨てきれていなかったのも事実だ。

歴代の王も好いた人がいただろうに。
どうやってその気持ちに折り合いをつけたのだろうか。


私にはできない。


「マリア、許して欲しい。君を苦しめ傷つけ…そして今君に残酷な事を言う。強欲な私は君を愛している。世界で一番」

「はい…はい!」


零れる涙を拭う資格はない。
だけど今だけは許されるだろうか。

永遠の愛が欲しいなどとは言わない。
一時でもよいマリアを思うことを許してほしい。


私の思いを察してくれたのかマリアは私に寄り添ってくれた。


「嬉しいです」

「マリア」


私の腕の中でこれ以上無いほど美しい笑顔で笑ってくれた彼女が愛おしい。


「どうして…こんなに好きなのに」

「ルミエル様?」

「同じ世界の人間じゃないんだ」


震えながらもマリアを抱きしめた。


そして己の運命を呪いたくなる。


「何故君が聖女だったのか…貴族の娘として出会えたなら」

「貴族の娘だったら私達は出会えなかったと思います。そして恋をしなかった」

「そうか…そうだな」


貴族社会の常識に囚われてしまっていたら私はマリアに惹かれなかった。


だがふと思う。


ならばサーシャ嬢とフレディーはどうだろうか。


「あの二人は例外のような気がします」

「そうだな」


特にサーシャ嬢が規格外すぎるのだ。


「私はサーシャ様に出会って覚悟を持てました。同時に勇気をもらいました」

「私もだ。最後の最後に胸倉掴まれ暴言を言われながらも背を蹴り飛ばされた」

「押されたのではなく?」

「ああ」


背を押すなんてそんな生易しい表現じゃない。
まさしく蹴り飛ばすが相応しいだろう。


「私は彼女のように本能のまま動けない」

「普通は無理だと思います。私も」


ある意味自由な彼女だからできるのだろう。


「きっと運命だったのかもしれません」

「運命?」

「私は運命という言葉が大嫌いでした。でもそう思えてなりません」


もし、彼女がただの異世界人だったら。
もしサーシャ嬢に出会わなかったら。


ジャネットが聖女だったら…


私の恋はどうなっていただろうか。


この出会いは運命かもしれない。


だが一つだけ解るのは。


「運命だったとしてもその道を変えてくれたのは彼女だな」

「ええ…だからこそ思うのです。きっとまた道が重なると」


サーシャ嬢はあの時、また会える。

そう私に言った。
普通ならば何を馬鹿な事を言うのだが…


彼女ならやりそうだな。
規格外の彼女に不可能はないような気がする。


本当に。


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