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98聖女の手記②
しおりを挟む英雄は美化されるとよく言ったものだ。
先人達の活躍は大げさに書かれると聞いたことがあるけど。
「今日もあのセクハラ聖職者に嫌味を言われた。見てろよ…結界魔法を習得したらぶっ殺す」
手記を読みマリア様に私達は何とも言えない表情になる。
「随分とイメージと異なるな」
「初代聖女はかなりの気丈な少女だったんだな」
殿下とフレディーは遠い目をしている。
確かに初代聖女は民を救うために尽くした健気な少女だった。
「聖女ならなければ罪人として殺すと脅された…」
「なんということを」
猊下が拳を握り今にも発狂しかねない。
「だけど私に優しくしてくれた教皇様に、竜のお姫様を助けたい。だから聖女の任を受けることにした」
「竜の姫って…まさか初代竜王の姫では」
フレディーの言葉にハッとした。
「竜の姫は異世界から来た私を元の世界に帰そうとしてくれた。教皇様も庇ってくれた」
手記の内容から、聖職者の一部は初代聖女様をほとんど脅しに近い事をしたそうだけど。
初代教皇猊下は聖女様を守っていた。
「試練の為に海底神殿の解放の後、神殿の連中は私を留めおこうとした…そうなれば私は操り人形となり、用済みになれば殺されるようだ…魔女として」
「なんて真似を」
「歴史上には聖女は自ら望んで国に残ったというのも偽りか!」
こうなると歴史は完全に塗り替えられていると思っても不思議じゃない。
「まだ続きがあります」
「読んでくれるか?嫌かもしれないが」
マリア様の表情が死んでいる。
もう絶望的と言っても過言ではないのだけど、読まなわけにはいかない。
「聖職者とは名ばかりで巫女を乱暴し、子供を孕ませ、邪魔になり毒を飲ませた最低な男。あんな男を何故神様は生かしておくのか…女神様どうかあの男に隕石を落としてください」
「「「もう聞きたくない」」」
私の気持ちは一つだった。
初代聖女様の憤りは解るし、最低だと思う。
「私は聖女でなく魔女になってでもあのクソ男を殺してやりたい。元の世界ならバイクで引きずってやるのに」
「バイクとはなんだ?」
「引きずる?」
「えーっと…小型の乗り物ですね?あと引きずるっていうのは…」
ものすごく言いにくそうにしているわ。
きっととても恐ろしい刑罰なのかしらね?
「超ムカつく。ギャルの私を超馬鹿にしてるって感じ」
「あの…口調が随分と」
「変わった言い回しだ。ギャルとはどこぞの種族か?」
最初こそはまだわかる言葉だったがだんだんと解らない単語が続く。
「元の世界ならボコってやるのに」
「ボコって?」
ますます理解できないわ!
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