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93お芝居①
しおりを挟む偽りの聖女を担ぎ上げた事で殿下の悪い噂を広めていた貴族派達は新たな聖女を担ぎ上げた。
しかしその聖女はなんの力も持たないただの貴族の娘。
少し魔力があるだけ。
その所為で、間違った方法で結界魔法を使ったせいで悪化した。
冒険家が戦闘時に結界魔法を作るのと、国全体の結界魔法を敷くのはわけが違う。
お姉様だって数年かけて修行していたのにそれをぽっとでの少し修業しただけの魔力持ちの貴族令嬢にできるはずがない。
不足部分を補うために魔道具を使ったようだけど。
使い方をちゃんと理解していなければ術者本人もダメージを受ける。
いうまでもなくその貴族令嬢は間違った結界を敷いたあげく、魔物を狂暴化させ村一つを火の海にしてしまったらしい。
そんな中、聖女召喚を強行した貴族派のオルレノア公爵の領地が襲われてしまった。
その所為でオルレノア領地から他の領地にも影響が起きて、海岸沿いゆえに瘴気に溢れれてしまった。
そんな危機的状況の最中に奇跡が起きた。
聖なる力が発動された。
そのおかげで各地で暴れていた魔物は森に戻り、瘴気により汚れた地も清められた。
「奇跡だ」
「聖女様の光だ」
「空を見ろ!竜だ…聖女様が竜に」
「隣には鳥の神様だ」
民はこの光景に奇跡だと感じた。
そして聖女の祈りは人々に希望をもたらした。
「まて、あの聖女様は」
「私達を助けてくださった巫女様だ」
「やっぱりあの方が聖女様だったんだ」
絶望を希望に変えた聖女に対して皆は。
「聖女様!」
「ありがとうございます聖女様」
聖女に感謝を述べる民たちに…
「皆さん、私の話を聞いてください」
黄金の光を放ちながら民に語り掛ける。
「すべての瘴気は浄化できました。魔物が侵入することはないでしょう…ですがこれで終わりではありません」
「え?」
「どういうことだ」
民たちはこれですべて元通りだと思い込んだが。
「私の役目は結界で邪悪な存在から皆を守ること。ですが、それだけなのです」
「聖女は神様じゃない。皆の飢えを救うことも、焼けた村を元に戻すことなどできない。彼女自身もただの人に過ぎないのだ」
隣に立つ殿下がゆっくりと語り掛ける。
「我が国は聖女が救世主だと担ぎ上げてきたが、一人の少女を長きにわたり犠牲にして来たのだ。彼女は異世界から無理やり召喚されたのだ…何も知らされず強引にだ」
民が集まる中殿下が告げた言葉に動揺が走る。
見ているだけしかできない貴族達は絶句したがすぐに止めに入ろうとするも、殿下は続けた。
ここからがお芝居の始まりだ。
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