聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!

ユウ

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86救世主~ルミエルside②

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誰もが声を失った。
失神しないだけで私は気丈夫だと言えるだろう。


「殿下!拷問はされておりませんか!」

「サーシャ嬢…」


竜を従える彼女に私は驚くことはない。
一度見ている私とは正反対に神経質な私の補佐達は気絶している。


「感動のあまりに気絶ですか?流石私の騎士様!」


「サーシャ殿、相変わらずの規格外だな」

どう考えても恐怖で失神しているに決まっているだろう。

「しかも足元にいるのは…」

「ロールです」

「いや、名前を聞いているのではなくてだな?」


どう考えても足元にいる竜は伝説の竜じゃないか?
海竜の王の仔竜だろう。


「フレディー」

「聞くな、察してくれ」

「聞いてもしんどいだけです」


ああ、マリアも諦めモードなんだな。
サーシャ嬢は何所かでも規格外であるのは解っていたけどここまでとは。


「殿下、酷い事はされてませんか?」

「酷いということはない」


缶詰になって仕事をしていただけだ。
酷い事はされていないが、執務室の外では私の事を好き放題言っている連中はいるだろうが。


「王都の外の騒ぎは君達か」

「ごめんなさい殿下」

「いや、正直助かった」


マリアを責める気はない。
盤石な地位を築けない私の弱さが招いたことだ。


「だが、こうなった以上は」


「解っている。マリア殿が公の場に立たなくてはならない」


私は聖女の存在をこの国から消したい。
聖女がいれば何でもできる。

すべてを丸投げしようとする考えを捨てなくてはならない。


「ルミエル、今は馬鹿を黙らせるのが先だ。そして聖女制度を本当の意味で廃止する為にも作戦がある」


「フレディー」


「その為にも今は耐えてください」


私は本当に馬鹿だな。
一人ですべてを片付けるなんて無理なのに、勝手に一人で背負って。


「結界は新しく外から張りなおした。魔物に関しては竜が見張っている」


「お任せください!竜達は私達の味方です」


サーシャ嬢。
私達ではなくだろう。


窓から睨んでいる竜は決して私達に有効ではない。
サーシャ嬢に限定しているだろうが口に出す必要はない。


「四方の結界は大丈夫だが…」

「既に辺境地に聖地巡礼としてマリア様に祈りを捧げて貰っています。貴族が見捨てた地を最優先に…それから言いたくはないのですが…姉の」

「ああ、ジャネット嬢がこれまで見下した貴族や平民か」


こんな言い方はしたくないが、これまで辺境貴族をないがしろにして自分に甘い言葉を囁く貴族を贔屓して来たの皺寄せが今来ているのだ。

その一方で、マリアが召喚されてすぐの頃。
教皇猊下の庇護の元で生活した時期、神殿を頼ってきた女辺境伯爵に手を差し伸べたのがマリアだった。


当初は身分を隠していたが、マリアは祈りを捧げ、救った。
他にも知恵を与えたのだ。


些細な事であるが、聖女かおしれない少女がちゃんと辺境地の者にも目を向けていると思わせたてくれたのだが、本人は自覚がない。

マリアの育った環境では差別が少なかったことが大きいのだが。


「マリア様に友好的な方々に協力をお願いしたんです」

「ああ、公に動くとまずいから海底から移動してだな」

「もう何も聞くまい」

やることなすことが規格外だ。
ある意味、マリア以上に救世主だな。



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