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85救世主~ルミエルside①
しおりを挟む古の時代よりモニーク領地には様々な言い伝えが残り。
海底は海竜の王国が存在していた。
その国が海底神殿と呼ばれ一説には竜宮城とも呼ばれている。
もしマリアが元の世界に帰ることができるならば、海底神殿の魔法陣を使う必要がある。
そのためには封印された神殿を開放する事だ。
これまでは伝説とした思わなかったが、手掛かりを見つけた。
まだ確実ではないが、マリアが元の世界に帰るにはこれしか方法はない。
私の権威が完全に失墜する前にモニーク家に保護を願い出て、クーデターが起こる前にマリアの安全を確保しなくてはと思って強制的に転移魔法を使った。
マリアが王宮を離れれば私の立場は危うくなるだろう。
だが、そんなこと知ったことか。
これまでも私の立場が危うくなることはあった。
いあばらの道を、焼け野原を、氷の橋をはだしで歩くような日々を送ってきた。
だからこの程度で私は崩れるわけにはいかない。
何より、国の政治問題にマリアを巻き込めないと思っていた。
だが、これ以上王宮に、私の傍にいれば優しい彼女は聖女として生きる道を選ぶだろう。
自分の生まれた国を、世界を捨てさせるなんてしてはいけない。
「マリアはこの世界に属する魂じゃない」
世界の均衡を。
秩序を乱せば後から歪みが生じてくるのは明白だ。
「これでいい…いいんだ」
マリアを愛しいと思っても私は王太子である以上は許されない。
そしてマリアは異世界の人だ。
「殿下!大変です」
「最後の結界が崩壊したか?それとも大臣が私を殺しに来たか?」
「それが…壊れた結界が新しく敷かれています!魔物が王都から逃げていきます」
「何だと!」
どういうことだ。
四方の結界の三つは壊れ、王都に魔物が侵入していたはずだ。
「空軍が…モニーク家の空軍が魔物を追い払ってくださいました」
「は?」
「空軍と共にマリア様がすべての結界を敷いてくださったようで!」
馬鹿な!
マリアを強制的に転移させて三日。
この短期間で新たな結界を敷くなんて不可能だ。
三つの神殿は離れている。
それに新しい結界を作るのは時間がかかるんだ。
「既に各地ではマリア様を聖女様とあがめ、戦意を失った騎士達も再び立ち上がっております!」
一体どうなっているんだ。
聖女への不信感と絶望的状況に、地方の騎士達も諦めている状況の中何故?
「殿下!聖女様がお戻りに」
その時だった。
大きな揺れを感じた。
「ルミエル様!」
マリアの悲鳴に近い声と一緒に。
「殿下ぁ!ご無事ですか」
救世主が現れた。
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