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77決断の時
しおりを挟む考えろ。
何としても考えるのよ。
ない頭で考えていい案を。
このままでは殿下の立場は悪くなる一方だわ。
「最悪なタイミングだ。ずっとルミエルの失脚を狙っていた」
「ジャネット様があの状況では立場は悪くなる一方でしょう」
フレディーと春麗も何か方法はないか考えるもいい案が浮かばない。
お姉様は自分の行動が正しいと思うあまり、間違いは認めない。
「どうして…何でですか」
マリア様は涙を流しながら訴えた。
「婚約者が自分の所為で追い込まれているのに、あの人は平気なの?あの人が愛しているのは自分だけじゃない!」
この言葉に私は何も言えない。
何て返せばいいか解らないのだから。
「ずっと王宮を見てきた…皆自分の良くの為に平気で他人を傷つける。巫女を奴隷のように扱う侍女、神官。これがこの世界の当たり前なの?」
「マリア殿、貴女の言うことは正しい。貴族社会では親を殺してでも地位を守る。その逆もしかりだ」
「そんな…」
絶望するマリア様にフレディーは追い打ちをかける。
だけど事実であるなら隠すことはできないし、すべきではないからだ。
「まるでマムシだ」
「だったら…こんな世界!」
「だが、こんな腐った世界を守ろうと命を懸けている者がいる。腐敗した社会を壊そうとしているのがルミエルだ」
私は社交界の残酷さを知らないで生きてきた。
でも生まれたころからその酷さを見てこられた殿下の思いは…
「ルミエルは聖女を否定している。その理由はどんな理由であっても女性を犠牲にするのが嫌いだからだ。民を守るは王族貴族の役目…そう思っている」
「でもあの人を守ろうとする人なんていない!どれだけで苦しんで心を砕いてきたか」
「いるじゃないか」
「え…」
フレディーはマリア様に近づき優しく告げた。
「貴女がいたではないか」
「私?」
「一番近くでルミエルを支えたのは私でも近衛騎士でもない」
その言葉にマリア様はしゃがみ込む。
「私…一人で逃げて」
「逃げじゃない」
「聖女になるのを嫌がって」
「それでいい」
「何もできなかった!」
幼子のように声を上げて泣くマリア様は心の中で溜めていたものを吐き出した。
ずっと無理をしていたのだろう。
「マリア様、貴女はどうしたいですか」
「サーシャ様」
「正直、今の状況下は厳しい。だが最悪の状況を変えることはできる」
馬鹿な私でも解る。
でもその方法はマリア様を苦しめることになるのが安易に解った。
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