聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!

ユウ

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70暴走~ジャネットside④

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声が聞こえだしたのは真夜中の事だった。
その日は別邸で祖父母も出ていた私は一人庭を歩いていると黒い薔薇が咲いていた。


『邪魔な妹は排除すべき』

「え?」


庭には誰もない。
でもはっきりと聞こえた。

人の気配もないのにと思ったけど。
再び声が聞こえた。


『道を阻むものは悪、自分こそが正義』

「薔薇が…」


一輪の黒い薔薇が語り掛けていると気づくのに時間はかからなかった。


それ以降、黒い薔薇が私に助言をするようになった。


私こそが正義。
正義は悪を排除する絶対的存在。

聖女の言葉を聞き入れないのが悪い。

そうだわ。
お父様は間違っている。

私が目を覚ましてあげないと。
出来損ないの妹を甘やかしてはならない。

そう思って私は正しいことをした。
王太子殿下の婚約者に選ばれ、後の国母となるのだから。


この社交界を作るのは私。


そうよ!

私がしっかり管理をしなくては。
私が白と言えば黒いものも白でなくてならない。


なのに――!



どうしてよ!



「貴女は可哀想な人ね」


憐れむような眼で見るこの令嬢。


「私が可哀想?」


「何も見えていない、何も解ってない。傍にいる侍女は甘い言葉しか言わない」

「何ですって!」

「私達はジャネット様の為に!」


私を憐れむその目はかつてお父様に向けられたものと同じだった。


違う!

そんなはずないわ!


「妹君を恐れるあまり、排除しようとした結果がこれ」


「私はあれを!」

「いいえ、貴女はサーシャ様が怖かったのでしょう?だから社交界でも悪い噂を流した」

「事実で…」

「わざと広めて、そして社交界に出ていない妹をサポートするのではなく妨害をしているようにも見えます。少しあ物事を深く考えられる方は解るわ」


まるでその言い方は!


「まぁ、類は友を呼びますものね?侍女が馬鹿すぎたのでしょう」

「私達が馬鹿?」

「なんてことを…」


侍女が馬鹿にされようがどうでもいい。
私にとって侍女は世話をする使用人で馬鹿にされて困るのは私の評価に繋がるだけだった。


「大体…」


――煩い。


「聖女候補であっても、貴女は」

「煩い!」

「えっ?」


この私を非難するなんて許さない。


『排除しなさい』


またあの声が聞こえてくる。


目の前の令嬢は私の邪魔をする者。


『邪魔存在を』


そうだわ。
私の道を阻むものは――


『悪を排除しなさい』


私を責める者は――


「排除すればいいのだわ」

「は?」


私の中で何かが弾けた瞬間だった。


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