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69暴走~ジャネットside③

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私は正しくないとだめだわ。
間違った母親の思考を正さないと。


聖女なのだから正しい。
そう思っていたのに、お父様は私を否定し始めた。


「ジャネット、またセリアを悪くいったのか」


「事実ですわ」

「お前は母親を悪く言われて喜んでいるのか…なんと愚かな」

「お父様!」


まるで私を失望した表情だった。
普段から冷静沈着なお父様は声を荒げたりしない。


だけどその言葉、一つ、一つが氷のようだった。


「お母様が…」

「人の所為にするんじゃない。サーシャは一度でも誰かの所為にしないというのに」

「何であれと…」

「妹をあれ呼ばわりか。人としてお前は…もういい。部屋に戻りなさい」

「お父様!話は…」


私の話は終わってない。
なのに私を冷たい氷のような目で見降ろすお父様は背を向ける。


「失礼します」

「どうした春麗」

「宰相閣下がお見えに」

「解った。すぐに行こう」


タイミングが悪く春麗が入ってくる。
サーシャの侍女である彼女が私は好きになれない。


「お茶の郷用意はお話の前でよろしゅうございますか?」

「ああ、あのお茶にしてくれるか。宰相閣下は最近お疲れだからな」

「かしこまりました」


異国の侍女で、お祖母様が用意した侍女を断った後に視察先で勧誘したとか。
いくら異文化の違いで苦労しているといえど、格別の待遇で出迎えているのが気に入らない。

所詮は野蛮な国の貧乏貴族令嬢にすぎないのに。


「春麗、先日のお茶会でも君の茶が好評だった。今度の王家主催で茶をふるまってくれ」

「もったないお言葉でございます」


「なっ…お父様!使用人を王族のお茶会など!」

「春麗は祖国ではお茶会の席を任されていた。この若さで宮廷で茶の担当を任された侍女だ」

「ですが侍女など…」


お父様はご自分が何を言っているのかわかっているの?
そんじょそこからの幼い子供のお茶会じゃないのよ?


「お前こそ侍女を何だと思っている」

「旦那様、おやめくださいませ」

「貴族令嬢が侍女として一生の仕事にすることもある。侍女を馬鹿にするなど物を知らなさ過ぎた。お前は一番大事な事を教えられなかったな」

「どうして…」


お父様は私を見てくれない。
私に手を差し伸べてはくれないのは…


「お父様」

「サーシャ、どうしたのだ」

「お客様がお待ちなので!」

「そうか、急ごう」


はしたなく大きな声を出し、品のない笑い方。

なのにお父様は咎めもしない。


何の努力もしないでへらへら笑っているだけなのに、お父様に愛されるなんて許せない。


顔を見るたびに、サーシャの笑顔を見るたびに私の心に黒い花が咲いた。

そしてその花は私に囁いだ。




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