聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!

ユウ

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58異世界の少女~マリアside⑥

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渡されたのは手紙と分厚いノートにお菓子だった。

手紙にはラベンダーの優しい香りがして私の尖った心が柔らかくなるようだった。


手紙には私の境遇や、心細い思いをしているだろうとの気遣いだけが書かれている。
文字一つ一つが優しく私は正直、自称聖女よりも聖女ではないかと思う程だ。


「彼女は君と交換ノートをしたいそうだ」

「何時の時代ですか」

「言っただろう?変わった令嬢だと」


確かに少し感性が変わっているかも。
でも断る理由がないので受けることにしたのだった。


顔も知らない貴族のお姫様。
でもこの時私の心が告げていた。

彼女は敵ではないと。
敵が王宮内だけど、私と友達になって欲しいと手紙に書かれてて微笑ましく思ったのだった。



手紙と交換ノートに同封されていたお菓子は美味しく頂いた。
返事を書こうとしたが、殿下に二通書くように言われた。


「万一の時の為にカモフラージュを用意した方がいい」

「どうしてですか」

「君が外部と連絡を取っている事を知られれば、厄介だ。折角書いた手紙も勝手に処分されるだろう」

「そこまで…」

「すまない」


誰がなんて聞く気はない。
そんなくだらない真似をする相手は誰かなんて考えなくても解る。


「それにしても、サーシャ様と彼女は本当に姉妹なんでしょうか?」

「どうしてそう思うんだ」

「顔を見た事はありません。ですがこんなにも優しい気遣いができる人と彼女が姉妹とは」

いくら環境が違うと言えどここまで差があるのもおかしい話だ。
その一方で思うのは、遠回しに姉の事を書いている。


姉を悪く言うのではなく、フォローするような言葉だ。


「サーシャ様は姉に虐げられているのにどうして庇うんです」

「彼女はかなり感覚が独特だ。姉に怒られて嫌われているのは自分が悪いと思っているし。これを機会に仲直りをして姉の手助けになろうと‥」

「なんというか」

いい感じに勘違いをしているのね。
私の周りにもそういう人はいた気がする。

いじめっ子に苛められていても気づかない天然タイプだ。

サーシャ様はまさに天然だな。


「天然記念物ですか」

「別名天然危険物になるんじゃないか」

「そうですね」


何だか愉快な人だ。
想像するとおかしくなる私は自然と笑えるようになった。


「サーシャ様にお礼をしたいのですが」

「彼女が好きな物は竜だ。竜の鱗や爪なんか喜ぶぞ」

「…恐竜マニアですか」


うん、かなり変わった人だな。


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