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57異世界の少女~マリアside⑤
しおりを挟む自称聖女は社交界の華と呼ばれているが、あくまで自称だった。
私は客観的に社交界を見たけど。
あんなの学校で言う、自称お姫様と同じじゃない。
クラスのリーダー格は二つのパターンがある。
不良タイプと優等生タイプ。
前者は見た目も高圧的な態度を取るも、自身で周りを制圧する。
対して優等生タイプは厄介で知能犯だ。
自分の手を汚さず周りに手を汚させる。
周りに嫌な役を指せて自分は一歩下がった場所で見て行き過ぎたらいい人の振りをする。
一番質が悪い。
アゲアゲ女ではないか。
私は自称聖女を好きになれない。
なる必要はないのだけど生理的に受け付けないし気持ち悪いのだ。
先日も社交界のパーティーで喪に服していた令嬢の服装を咎めていた。
見るからに地味な装いだったけど、お母さんを亡くしてばかりでパーティーに出なくてはなたなかったそうだ。
他にも金銭的に裕福ではないと聞いている西の辺境伯爵令嬢の服装をもっと華やかものにしろと命じたらしいけど、しないのではなくできないのだ。
それを上から目線で。
「そんなに言うなら、聖女様が寄付してあげるか、改善をしてあげればいいのに」
私は一人呟いた。
「君の言う事は同感だ」
「殿下…」
背後にまさか殿下がいたとは気づかなかった。
「どうしてこちらに」
「風邪と言うのは仮病だ。こんな茶番劇に付き合う暇はないんでね」
「はぁ…随分止めたいのですね?恋人に対して」
「彼女は恋人ではない。婚約者だ」
同じでしょう?
恋人も婚約者もそう変わらないと思ったのだけど。
「マリア殿、貴族社会では恋人と婚約者は異なります。婚約はあくまで家同士の利益の追求。そこに気持ちはありません…まぁ婚約中に愛を育むのですが」
フレディー様は私に解りやすく教えてくれた。
ついでに補足してくれたのは自称聖女との間に親愛の情もないとの事だ。
「彼女は聖女候補だ。厄介な事に亡くなった祖母が強引な婚約をしてな。私も聖女候補故に野放しにできない」
「つまり監視と…」
「当初はちゃんと婚約するつもりだったがな」
まぁ、あの勘違い女では付き合うのは大変だろう。
私がどうこう言う事ではないのだけど、中々厄介だ。
「今度お茶会があるんだ」
「行かないとダメですか」
「申し訳ないが…」
あの自称聖女にまた嫌味を言われるのか。
王宮内でも侍女同士の派閥争いが出来ている事で、かけ事までされている。
でも本当は違う。
私の侍女は神殿にいた巫女がしてくれてるし、彼女は全く自称聖女の侍女なんて相手にしていない。
何時も無視をしているのだから。
なのに勝手に周りが騒いでいるだけに過ぎないのだから。
「そうだ、君に贈り物だ」
「先日王妃陛下から新しいワンピースを」
「そうじゃない。フレディーが婚約したんだ。贈り物はその婚約者からだ」
「え…」
面識もないのに何故私に?と思ったのだが。
「気を悪くしないでくれ。相手はジャネット嬢の妹君だ」
「何故‥」
ますます疑問を感じる。
自称聖女の妹ならば私を毛嫌いしているのではないかとも思ったけど、嫌がらせや脅迫状なら殿下が受け取る事はない。
「マリア、彼女は決して悪い人じゃない。少し変わった令嬢であるが…人の心が解る人だ」
「はぁ…」
渋々受け取ることにした。
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