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38孤独な少女
しおりを挟む「助けてあげたい」
私はぽつりと呟く。
マリアという少女はどんな思いをしているのか。
「殿下、マリア様は何がお好きですか?」
「え?好きなもの?」
きっと心細い思いをされているのではないかしら。
「春麗、貴女はどうだった?」
「え?」
「いきなり遠い国に来て、辛くなかった?」
春麗とマリア様では状況が違い過ぎる。
でも清の国とバルカス王国では習慣も考え方も異なり、清の国を良く思わない人も多く差別を受けることも多いと聞いた。
「私とはまるで違います。マリア様の孤独は相当な…いえ、失礼しました」
殿下の前で言うべきではないと思ったのか言葉を飲み込むも殿下は苦笑した。
「続けてくれ。事実なのだから」
「春麗、君は当時どうだったんだ」
「心細くて、しばらくは夜も眠れない日が続きました。故郷を恋しがりました」
「春麗…」
私の侍女になって当初の頃を思い出す。
夜眠れず食欲もなく顔色が悪かった日の事を思い出す。
「そうか…」
「ですがフレデリック様。それは私が未熟だったのです。それに望んで私はこの国に来ました」
国を渡る事は相当な覚悟がいる。
他国に嫁がれる姫様は孤独との戦いだ。
でもマリア様は?
何の心の準備がないままで、いきなりだった。
元の世界に家族がいて。
大事なものすべてを置き去りにしなくてはならないのだから。
「お嬢様、マリア様の心はご自身で乗り越えざるを得ないのです」
「春麗」
「私とは異なります。望んでこの国に来た私、無理矢理この世界に召喚された方」
どれだけ辛いのか。
私には耐えられないかもしれない。
お父様とお母様と無理矢理引きはされ、王宮に留め置かれてしまったのだから。
「ですが、心からその方を思う気持ちは救いとなりましょう」
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二人は解るけど、私は何もしていない。
良かれとした事はこれまで裏目に出てしまった事が多々ある。
「春麗、教えてくれないか」
「フレデリック様…しかし」
「言わなくていいから!フレディー、別に聞くような事では」
「是非聞きたいな」
絶対言わないで欲しい。
だって私にとって黒歴史しかないのだから。
父方の祖父母に決定的に嫌われる原因になった事件でもあるのだから。
絶対に知られたくない。
「マリアを救う為だ」
殿下の滅入れであれば春麗は口をつぐむことはできなかった。
結果的に私のやらかした黒歴史を知られる事となった。
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