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35招かざる客
しおりを挟む贅沢な食卓を囲みながら私は幸せいっぱいだった。
ただ少し量が足りないけど我慢だ。
ここで沢山食べては行儀が悪いし、沢山食べる令嬢は嫌われると聞く。
例に漏れずお姉様も小食だった。
「サーシャ、これも良かったら食べてくれ。というか足りないだろ」
「はい?」
「一週間サバイバルを共にしたんだ。沢山食べていただろ」
しまった!
確かにあの時は魚とか、木の実とか食べたけど。
足りないので、森に生息する地竜さんがこっそり果物を取って来てくれた。
「あの…」
「君はそのままの方がいい。無理をするな」
そう言いながらフレディーは追加のパンをお皿に乗せてくれた。
「ギャウ」
「ギャア」
同時に窓から果物が投げられ私のお皿に。
「投げるんじゃない!」
「ギャウ!」
「何だ、私に対してその態度は」
地竜が私のお皿にバナナを投げてくれた。
ついでに向かいに座るフレディーにも何か投げてくれたけど。
「バナナの皮ですか…」
「なんという嫌がらせだ。私に何の恨みがあるんだ」
「あの…食べます?」
バナナを差し出すと。
「それを食べた後の末路を考えてくれ」
窓からひょっこり顔を出す彼等はまた訴えている。
どうして食べてくれないの?的な表情だ。
「竜に嫌われるとは竜騎士が聞いてあきれるな」
「「は?」」
そんな中第三者の声が聞こえた。
「なっ…」
「先ほどからいい物を見せて貰った。劇場で喜劇を見るよりもずっと愉快だな」
どちら様だろうか。
世間知らずの私でも解る程の品の良い方に上質なマントだ。
「もしやフレディーのお兄様でしょうか」
「血縁者であるのは間違いはないが…僕の事を知らないのか?」
「すいません。世間知らず者で」
少しだけ顔立ちが似ている。
親族にしてもここまで似通うものだろうか?
「お嬢様、無礼ですよ。そちらのお方は」
隣で春麗が真っ青になって何かを訴えている。
「サーシャ嬢、初めまして」
「え?」
どうして私の名前を。
「ようやく貴女に会えたな。未来の妹殿」
妹?
私が?
そこでようやく気づいた。
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「これ以上馬鹿を言うとその口にパンを詰めこみますよ」
「怖い怖い、本当に冗談の通じない…睨むなよ」
背後で竜が怖い視線を送っている。
さっきまで和やかな空気だったのに何故だ?
竜達は殿下が嫌いなのかしら?
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