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30武者修行と花嫁修業②
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昼食時、果物やキノコを採ったりした。
野外授業を思い出しすごく楽しかったけど、これって花嫁修業なのかな?
「大量、大量」
「お嬢様、元気ですね」
「うん、楽しいよ」
部屋に籠って机に向かって勉強の日々よりもこうして体を動かす方が好きだ。
「フンフン!」
「お嬢様、あまり長く水の中に入っては危ないですから」
「大丈夫よ」
最初こそは咎めていた春麗だけど今では諦めていた。
「ふふっ…私今日で三回目の乗竜しちゃった」
「乗馬ならぬ乗竜ですか」
お父様とお母様にもこの楽しさを教えてさしあげたい。
その一方で思う。
「こんなに自由があるのに、王都の貴族令嬢は可哀想」
「お嬢様」
「窮屈なドレスに、窮屈な生活にしきたり。必要なのは解っているけど」
自分を偽らないと生きていけない。
それは貴族だけではないかもしれないのだけど。
「竜は自由なのに」
「そうだな。彼等は自由だ‥自由の代償もある」
過酷な生活か。
確かに便利とは程遠いかもしれない。
「でも必要以上に誰かを傷つけない。こんな優しい目をしている…こんなに優しい目をしている種族はいない」
そっと背中に触れて頬を寄せる。
温かい体温を感じながら空を見上げる。
「いつもより空が綺麗に見える…これが彼等の見る世界」
「お嬢様‥」
「人は同じ生き物なのにどうして差別をするのか」
種族が違うなら仕方ないけど同じ種族の生き物で比べ合って傷つけあう。
他人だけではなく同じ血を分けた姉妹でも争わなくてはならない。
「争わずにすめばいいのに…傷つけたくないのに」
お姉様はどうしたら私を許してくれるのだろうか。
私はお姉様に愛されたい。
だってたった一人のお姉様だもん。
「サーシャ、君は人が好きなんだ。いや人だけじゃない」
「はい。私はお姉様が好きです。人が好きです」
でも片方だけじゃダメだ。
「私はやっぱり馬鹿だから」
考えが足りないからなのかな。
だから聡明なお祖母様は私を見るたび汚い物を見るような目をしていた。
「お嬢様は馬鹿ではありません。馬鹿なのは人の気持ちを考えないのが馬鹿なのです」
「そうかな…」
「私はこれまで一度でもお嬢様が姉君に劣っていると思った事はありません」
全ての人に好かれたいと思っていない。
そんなのは無理なのだから。
でもせめてお姉様の事をもう少し理解したいな。
野外授業を思い出しすごく楽しかったけど、これって花嫁修業なのかな?
「大量、大量」
「お嬢様、元気ですね」
「うん、楽しいよ」
部屋に籠って机に向かって勉強の日々よりもこうして体を動かす方が好きだ。
「フンフン!」
「お嬢様、あまり長く水の中に入っては危ないですから」
「大丈夫よ」
最初こそは咎めていた春麗だけど今では諦めていた。
「ふふっ…私今日で三回目の乗竜しちゃった」
「乗馬ならぬ乗竜ですか」
お父様とお母様にもこの楽しさを教えてさしあげたい。
その一方で思う。
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「お嬢様」
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自分を偽らないと生きていけない。
それは貴族だけではないかもしれないのだけど。
「竜は自由なのに」
「そうだな。彼等は自由だ‥自由の代償もある」
過酷な生活か。
確かに便利とは程遠いかもしれない。
「でも必要以上に誰かを傷つけない。こんな優しい目をしている…こんなに優しい目をしている種族はいない」
そっと背中に触れて頬を寄せる。
温かい体温を感じながら空を見上げる。
「いつもより空が綺麗に見える…これが彼等の見る世界」
「お嬢様‥」
「人は同じ生き物なのにどうして差別をするのか」
種族が違うなら仕方ないけど同じ種族の生き物で比べ合って傷つけあう。
他人だけではなく同じ血を分けた姉妹でも争わなくてはならない。
「争わずにすめばいいのに…傷つけたくないのに」
お姉様はどうしたら私を許してくれるのだろうか。
私はお姉様に愛されたい。
だってたった一人のお姉様だもん。
「サーシャ、君は人が好きなんだ。いや人だけじゃない」
「はい。私はお姉様が好きです。人が好きです」
でも片方だけじゃダメだ。
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考えが足りないからなのかな。
だから聡明なお祖母様は私を見るたび汚い物を見るような目をしていた。
「お嬢様は馬鹿ではありません。馬鹿なのは人の気持ちを考えないのが馬鹿なのです」
「そうかな…」
「私はこれまで一度でもお嬢様が姉君に劣っていると思った事はありません」
全ての人に好かれたいと思っていない。
そんなのは無理なのだから。
でもせめてお姉様の事をもう少し理解したいな。
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