聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!

ユウ

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29武者修行と花嫁修業①

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モニーク領地は北の最果て。
国の最後の守りと呼ばれるだけあって領地内には不法侵入ができない。
海底には海の竜。


海竜族と呼ばれる竜が常に外敵を逃さないように監視している。


万一運よく陸に逃げられたとしても樹海には別の竜が生息しており、侵入者を逃さない。

竜以外にも樹海には数多の仕掛けが仕組まれており、その仕掛けをかいくぐるのは至難の業らしい。

その為鍛え上げられた竜騎士でなくては生きて帰られない。


・・・・らしいのだけど。


「ひゃっほー!」

「お嬢様!先に言ってはなりません」


「ターザンだな」


現在私はその樹海で花嫁修業中。
ツルにしがみ付きお猿さんと一緒に楽しんでいた。


「くっ、なんて身軽なんだ」

「我ら竜騎士が遅れを取るだと!何としても追いつけ」


「そこのお二人!変な事で競わないでください!」


王都ではまずこんな事できないし。
母方の実家ではよくこうしていたけど、王都に来てからははしたないので許されなかった。


「やるな、私も負けてられない」


「ですからフレデリック様!」


「春麗、なんか蛇が沢山いるよ」

「お嬢様…」


服装だってコルセットをつけないといけないドレスなんて着なくていい。
まぁ元からドレスなんてそんなに持ってなかったけど。


私もドレスよりも今の服装の方が好きだったんだよね。


「サーシャ、そのまま競争だ!その先に地竜がいる!そのまま飛び乗って勝負だ」

「望む所です!」


「お二人共!」


私はそのまま地竜を見つけて飛び乗った。


「ギャウ?」

「湖まで」

「馬車じゃないんですから!」


チップに干物を差し出すと地竜は首を振った。


「ギャウゥ!」


首に捕まりそのまま景色を見渡すと絶景だ。


王都の生活が小さく見えて行く。


「私の勝ちです!」


「負けたか」


ゴールインした私は地竜と共に赤い旗を掲げた。


「ありがとう。君のおかげで勝ったよ」

「ギャウ」


竜とは自尊心が高く人には懐かないと噂をされていたけどすごく優しい種族だ。


「ふわぁー、抱き心地最高。寝る時に傍にいて欲しいかも」


こんなに優しい種族なのに何で人は誤解をしたんだろう。
竜は危険な種族。


共存は出来ない。
長命な生き物故に危険すぎる。


迫害をしようとしている人もいる程だ。
けれど王太子殿下は聡明な方で竜族との共存を望み、竜の国への不可侵入同盟を作られたとか。


モニーク領地は国内でも唯一人と共存する事が許されている。


「王都にも竜と暮らせたら素敵なのに」


こんなに大きくて優しい生き物はいないのにな。


私は触れ合って竜への思いが強くなった。


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