聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!

ユウ

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26姉の苛立ち~ジャネットside①

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一週間前にサーシャがモニーク領地にて花嫁修業をすることになった。
情報元は私の専属侍女の一人から調べさせたのだけど。


私は当初厳しい事で有名なモニーク家から追い出されると思っていた。
何故ならあの一族は他の貴族と異なり、根っからの戦闘民族とも呼ばれている。

ただ美しいだけでは婚約者としての資格はなく、邸に入る前に試験が行われると聞いたことがある。


その時点でサーシャは不合格だわ。
社交界に出ておらず、淑女の嗜みもないあの子が受け入れられるはずがない。


――そう思ったのに。



「ねぇ聞きまして」

「ええ、竜の姫君の噂」


「もう噂になってますものね?サーシャ様が竜に認められたとか?」


は?
何を言っているの?


「侯爵家では謎の姫君と呼ばれていましたものね」

「ご両親が溺愛するあまり社交界に出したくないと…聞けば以前からモニーク家から婚約の話が来ていたとか」

「まぁ、ではその為ですわね」


――そんなはずないでしょ!
全部でたらめよ!

「聞けばモニーク家は愛人を持たない程の愛妻家として有名ですもの」

「そうでしたのね…では社交界に出れない程の令嬢と言うのは嘘ですわね」


「社交デビューをしないのもモニーク領地で行いたいという先方の願いを優先したとか」

「まぁ、なんて寛大なのかしら。流石が侯爵様」


違うわよ。
社交界に出られない程の馬鹿だから。
礼儀作法もまるでダメだから社交界に出さなかっただけ。


なのに!


「社交界でも影響力の強いモニーク伯爵夫人がお茶会でも太鼓判を押していたそうですわ」

「まぁ、ではその内夫人会にも顔を出されるでしょうね」


「ええ!お近づきになりたいわ!」


何も知らないで好き勝手な事を言う令嬢達に苛立ちが募る。

そんな中。



「失礼します」


私に会釈して通る見慣れない令嬢。


「なっ…ジャネット様に無礼な」


「そうですわ!」


「ですが、道の真ん中に立たれていたので。通れなかったので」

「は?」


私は聖女で侯爵令嬢なのに。
こんな無礼を許されないのに何で!


「マリア様、参りましょう」

「ちょっと待ちなさい!ジャネット様に失礼でしょう!」


「道を塞がれていたのは事実です。それにマリア様は礼を欠いたわけではありませんわ」


何なのこの侍女は。


「マリア様、王妃陛下がお待ちです」


「なっ!」

王妃陛下ですって?
何で…聖女の私もまだ直々にお目にかかったことはないのに!


「マリア様はもう一人の聖女候補。異世界から召喚された方ですわ」


「そっ…そんな」

「故にジャネット様と対等の立場なのです」


侍女の言葉に絶句した私は立ち尽くすしかなかった。


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