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25新しい世界

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ダンジョン攻略のご褒美は憧れの竜の図鑑だった。


「うーん。見るの持ったない。飾らないと」


「いや、図鑑は飾る物ではなく見るものだぞ」


解っているけど、こんな立派な図鑑は初めてだった。
私だけの図鑑。

しかも名前付き。


「お嬢様の本や教材は姉君のお古が多くて…」


「いや、だとしてもだが」

「リシュフェール家の教育方針と言いますか…前伯爵夫人のお考えで」


小さい頃は淑女教育もお姉様とおなじもの。
勉強の本もお祖母様の言いつけたものが多くて、私の趣味の者は買ってもらえなかった。


だって取り上げられるから。

綺麗なドレスや髪飾りよりも花が好き。
お姫様の物語よりも冒険物語が好き。

そして竜の物語が好きだった。


「なんというか私の好きなジャンルは野蛮らしいんです」

「それは偏見だろう」

「だから図書館でこっそり見たり、時々お邸を脱走し…じゃなくておでかけをして」

「脱走…」


缶詰では息がつまる。
だから春麗を巻き込んで脱走する事は多かった。

そのおかげで今では他の使用人に気づかれないように外に出ることができた。


「逞しいな…万一賊がが言った時頼もしいよ」


「いいえ、それは褒めないでくださいませ」


さっきから春麗の表情は怒ったり真っ青になったりと忙しいな。


「それにしても私はこんなに素敵なお部屋をいいのですか?」

「ああ」

「窓も大きいし。日差しもすごくいい」


「日差しが強すぎてどうかと思ったんだが、母上はここがいいだろうと」


うん、お姉様は日差しの強いお部屋を嫌がっていた。
白磁のような白い肌が焼けるということらしいけど、私は良く外に出るから日焼けも多かった。


「私お日様の日差しが一番好きです」

「そうか…それは良かった」


フレデリック様は気難しい人だと聞いていたけど、随分と噂と違うな。
でも噂なんてそんなものだ。

あてにならないのだから。


「喉が渇いているだろう。甘いものは好きか」

「フレデリック様、そのような事は私が…」

お茶を淹れてくださるフレデリック様に春麗が急いで代わりにと言うが。

「気にしなくていい。お茶ぐらい淹れられるさ。まぁ王都の上質なお茶に叶わないがな」

「すごく良い香り」

「この領地のお茶は香りが良いんだ」

紅茶ではない。
清の国のお茶に似ていてすごくいい香り。


「これはスパイス?」

「ああ、シナモンを淹れている。体も温まる」

「初めて飲む味ですが美味しいです」

お母様は寒い日には紅茶にバターを入れていたのだけど、紅茶の色が変色するとお姉様は毛嫌いをしていた。


でもこんなの味方もあるんだ。
お姉様は王宮の、社交界の決まりを守ってお茶を飲んでいるけど冒険して見ても良いと思うんだけど。



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