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19いい旅
しおりを挟む空の旅を堪能して一時間。
沢山の竜が飛んでいた。
「ふわぁーすごい」
「いや、この時期は巣から出ないんだが」
「ギャウ!」
窓から竜が私に手を振ってくれている。
「わぁ!こんにちわ!」
「ギャウ!」
私も手を振ると竜車に近づく大きな竜と背中に乗っているのは小さな竜だった。
「サーシャ嬢、あまり近づいては…わぁ!」
竜車が揺れ、窓に放り込まれたのは花と木苺だった。
「これ、くれるんですか」
「ぎゃう」
「わぁーありがとうございます」
とっても美味しそうな木苺を早速頂く。
酸っぱいけどすごく美味しいな。
「お嬢様!不用心ですよ」
「はは…私も少し心配になるな。警戒心がまるでないな」
二人は頭を抱えながら何かブツブツ言っていると。
ドォン!
再び揺れる竜車に驚くも今度は果物や魚までも放り込まれる。
「わぁ!魚」
「何です?おひねりですか」
「いや、違うと思うが…先程から食べ物を」
見た事がない果物に魚を受け取ったのだけどだったが魚を投げ込んだ竜が首をかけしげる。
まるでどうして食べないの?と言われているようだ。
「お嬢様!いくら何でもなりませんわ」
「サーシャ嬢、そのまま食べてはならない!お腹を壊すだろ!」
折角の御行為だ。
食べない事に悲しい顔をする竜にも悪い。
「でも見てあの目を。あんな悲しい顔を…お腹壊すぐらいなら」
「いや、王都の貴族にはこの魚はキツイ…って何をしているんだ」
「とりあえず鱗を削って刺身に」
エルガー先生にいただいた七包丁が役に立つ。
野外授業でキャンプ飯を作る事もあったのでいざという時に持ち歩いていた。
「これで食べられるはず…」
「お嬢様!私がいたします!」
結局春麗が綺麗なお刺身にしてくれた。
「うぅー!美味しい!」
「サーシャ嬢は生の魚が食べられるのか」
「お嬢様幼少期は海の近くで過ごされておりまして。お肉よりも好まれています」
「春麗、君は刀工の才能が素晴しいな」
「恐れ入ります」
清の国では料理とは芸術。
特に刀工の腕を磨いていた春麗の料理の腕は芸術に近かった。
お刺身のすごく綺麗だ。
「何もなくても美味しい…すごく新鮮だ」
「お嬢様、お願いですからもう少し」
旅先でこんなに美味しい魚を食べられるなんて幸せ。
「王都の料理は脂っこくて苦手だったんだけど。こんな美味しい魚なら毎日食べたいかも。竜さん!ありがとー!」
「「「ギャウ!」」」
私がお礼を言うと彼等は手を振ってくれた。
なんて優しい竜なのだろうか。
旅先でこんな歓迎を受けるなんて。
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