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17すれ違い
しおりを挟むエルガー先生の言葉はすとんと入って来る。
だけどその言葉はお姉様にとっては許せなかったようだ。
「このような侮辱を受けたのは生まれて初めてだわ」
「あら?今まで温室のように育てられたのですか…ですが世間の風はもっと厳しゅうございますわ」
「黙りなさい!」
「お姉様…どうしてしまったんですか」
ここまで怒る理由がどうしても解らない。
社交界の華と呼ばれるお姉様は常に理性的で完璧なはずなのに。
「落ち着いてください。お姉様らしくないです」
「私らしくない?…そもそも貴女の所為なのよ」
「え?」
お姉様はこれまで私にここまでの憎悪をぶつけるような真似をしなかった。
なのに何故と?思った。
「私は貴女の為に態々私の先生を派遣してあげたのに。貴女はまるで成長しない。侯爵家の人間として努力もしないで遊び惚けて…」
「私はちゃんと勉強してました」
「口答えしないで。努力なんて誰でもできるわ。身についていないのだから何もしてないのと同じよ。亡くなったお祖母様は侯爵家を誰よりも考えていたわ…なのに貴女はその思いを考えもしない」
「私は私なりに考えて…」
「例え継承権はなくとも貴女侯爵家の血を受け継いでいるのよ。なのに王都に貴族に貰い手がないからと辺境貴族に…」
「まったく何処までジャネット様の立場を悪くすれば気が済むのですか」
お姉様と一緒になり責めるヒテック先生。
でも思うのだ。
「あの、お姉様」
「何?」
「私の存在だけでお姉様の価値は下がるんですか?」
「は?」
怒っているお姉様に対して思うのは疑問だけだった。
「出来の悪い妹がいたとしても聖女の評価にそこまで問題になるのでしょうか…私は嫁いだら王都を離れますし。私の存在はそこまで大きいのですか」
「なっ‥私を馬鹿にしているの?」
「いいえ、疑問に思ったんです。私は社交界に出ていないのでそこまで害にならないと思います。なのにどうしてそんなむきになって」
私一人で侯爵家がどうこうなるなんてありえないわ。
「何を言って…」
「だってお母様は侯爵家の立派な女主よ…それに世継ぎだってこの先生まれるかもしれない」
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「…何も解ってないのね」
「お姉様?」
「触らないで!」
手を伸ばそうとすると腕を振り払われ。
「王宮に帰るわ!」
そのまま去って行ってしまった。
ここはお姉様の家でもあるのにお姉様にとって帰る場所は王宮になってしまっている事に悲しさを感じた。
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