聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!

ユウ

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12正反対の娘~サリアside③

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次女は安産だった。
ジャネットの時は難産だったのに対してサーシャは予定日ぴったりだった。
元気な産声を上げて病気もなく、すくすく育った。


ただし早熟のジャネットと常に比較されハイハイが遅い、言葉を発するのが遅い。
常に義母は比較した。


「ジャネットはこの頃から立てたのに」

「発達も遅い」

「ですが私や妹も…」

「侯爵家の血を引く者に出来損ないは不要だ!」


私の腕に抱かれているサーシャの前で罵倒を浴びせる義母。
仕切り無しに私を責める義父に気づいたのか、それとも自分が責められたのか。


「びやぁぁぁあ!」

「何て喧しいの!」

「耳が潰れそうだ」


さっきまで大人しかったのにいきなり泣き出し暴れ出す。


「あーん!」

「なんとかなしなさい!」

「はっ…はい」

乱暴に私からサーシャを奪おうとするとサーシャは更に暴れて泣き出す始末だ。


「何をしている!」


「カルディ様…」


「お前は赤ん坊に何をしている!」


乱暴に抱く侍女を睨みつけ夫はサーシャを奪い抱き上げると。


「ひっぐ…ふぇ」

「サーシャ、どうしたんだ。普段のお前はそんな風に泣かないだろ」

「ぐずっ…まー!」

「そうか、お前は母上を守ろうととしたのか?」


抱き上げながら同じ目線を同じにして話しかける。


「何を馬鹿な事を」

「こんな乳飲み子…しかもジャネットよりも劣るこれが」


名前すら呼ばないでこれ呼ばわり。
あんまりだわ。


聖女になれないならそこまで価値がないの?


「二人共離れてください」

「「は?」」

「サーシャは二人に怯えているのでしょう。愛する母を傷つけられて悲しまない子がいましょうか。この子は本当に母親思いの優しい子になるでしょうね」

「何を…」

「ジャネットは人として欠落しています。人の温かさを知らない」


「なんて事を!」

「カルディ!貴様と言う奴は」


サーシャを私に預けながら夫は厳しく言い放つ。


「ジャネットは母親が傷ついても興味を締めなさい。対してまだ赤ん坊のサーシャは母を傷つけられ悲しんでいる。人として大切な物を持っているのはどちらでしょう」


優しいサーシャ。
まだ赤ん坊なのに、私の指を強く握って私の心を守ってくれた。


天才でなくても良い。
聖女になれなくてもいい、むしろなって欲しくない。

義母は聖女にしたがっているけど。
王宮に、国に縛られ牢獄の中と同じだわ。

自由な物は何一つない。
そんな場所に娘を送りたくない。

サーシャは好いた人と一緒になって幸福になって欲しい。

貴族である以上難しいけど。

でもそれが私の願いなのだから。


けれど私は甘かった。
この日を境に義母の嫁いびりは酷くなるだけでは済まなかった。

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