聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!

ユウ

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8新しい家庭教師

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お父様の口添えで新しい家庭教師を紹介された。


「本日より、サーシャお嬢様の家庭教師をさせていただきます。エルガー・ハイントでございます」


ピンと背筋を伸ばし、これまでの家庭教師の先生と異なっていた。
服装は黒いドレスを身に纏い、ふんわりしたドレスではなく、とてもシンプルだった。


「エレンガントを重視してこれから一緒に頑張りましょう」

「よろしくお願いします先生」


「背筋を伸ばしてください」

「はっ…はい!」


早速注意をされるも…

「一つ、一つ丁寧にしておけばいいいのです。マナーは一日にしてならず…急ぐ必要はございません」

「はい」

「大丈夫ですわ。苦手でも楽しいと思えるものを見つけるのです。そうすれば必ず習得できます」


第一印象は怖いと感じたけどすごくいい人だわ!


「一緒にエレガンスになりましょう!はい、エレガンスポーズ!」

「エレガンスポーズ!」


仲良くなれそうな気がしたのだけど。


離れた場所で私達のやり取りを見守っていたお母様と春麗はと言うと。


「大丈夫でしょうか」


「私も不安だけど、今までの家庭教師よりは…ねぇ?」


エルガー先生とエレガンスポーズの練習を見て不安を抱いていたとは気づかなかった。



そんなこんなで私の淑女教育改め花嫁修業が開始された。



「とぉ!」

「腰を落してください」


「はい先生」


まず手始めに蒔き割の練習だった。



「何故巻き割を」

「モニーク領地は寒い土地で、自身で薪を取りに向かい尚且つ巻き割もできなくてなりません。その為のお勉強です。さぁ…」


「とぉ!」


私はエルガー先生に言われるがままに蒔き割の練習をした。


「大きさを揃えてください。そうです、いい感じです」

「もっと行きます」


ドンドン薪を割り続けた。


「では次に火を熾します。さぁこの紐で」


「何時の時代でしょうか」

「万一の時に備えてです」


紐を使って火を熾すなんて冒険家になった気分だわ。


「先生煙が…」

「まだですわ!」

「はい!」


煙に感動する私は絶えず作業を続けた。


「今です。こちらの草を」

「はい!」


焚火の準備が出来た。


「わぁ!先生できましたよ」

「では本日はこの火を使いマシュマロを焼きましょう」

「マシュマロを…」


大好きなマシュマロ。
焼いたらどんなふうになるのかしら?


「生クリームは」

「戦場でそんな物はありません!」

「えっ…」


焼くだけ?
なんてシンプルなの!


「奥様、これではお嬢様が野生に目覚めてしまうのでは」


「ものすごく心配になって来たわ」



結局マシュマロは美味しく頂き、野外授業はとても楽しく、これまで嫌々学んでいた授業とは正反対だった。



そんな最中、王宮では。



「あの子が婚約?一体どうして!」


私の婚約がお姉様の耳に入っていた事に気づかずにいたのだった。


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