聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!

ユウ

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3優しいお母様

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人並みの事ができない私は社交界デビューなんて夢のまた夢。
八歳になると通常はお茶会に参加するのだけど、私の場合は問題があるとお祖母様が必要ないと断ったそうだ。


王都にいる事も少なくなり、一年の大半を領地で過ごし。
そんな中、お祖父が病に倒れてしまった。


寝たきりのお祖父はしきりなしにお姉様の名前を呼び私がお見舞いに行けば嫌な顔をされる。
基本的なお世話は使用人がしてくれるけど、お母様が主となる。

その所為か、病気で苛立つ中お祖父様が暴力を振るおうとされる。


「邪魔だ!触るな!」

「お止めくださいお義父様!」

使用人が暴力を振るわれればすぐにお母様が対応する。
お父様は仕事が多忙で滅多に領地には戻られる事もなく、お母様は精神的に疲れて来た。


そんな中、私は出来ることが少なかった。


「ジャネットならば良かったものをお前などいてもいなくても同じだ」

「はい、お花の水換えますね」

「この出来損ないが」


悪態をつかれる日々。
でも怒るだけまだ元気があるのだとお医者様が言っていた。


私は勉強もできない。
礼儀作法もダメダメだからせめてお母様の負担を減らしたかった。


「お嬢様!そのような事は私達が」

「でも、またお祖父様に暴力を振るわれるわ。私だったら大丈夫だもの」


使用人に対しては少し乱暴であるけど、私はそこまで酷いことはされない。
だけど貴族令嬢が病人のお世話をするのは良くなかったのか。


「遊んでいる暇があるならもっと勉強なさい…ジャネットは勤勉なのにどうしてお前は…何故お前は」


お祖母様に至っては私が頻繁にお祖父様の部屋にお見舞いに行くのを嫌な顔で見るけど、お祖母様も病を患っており私は切り替えをするようになった。


「お母様、私こんな事しかできないけど…ごめんなさい」

「サーシャ!」


私にできる事はお母様の大好きなお花を積んできたり、大好きなお菓子を侍女と一緒に作ったりと細やかな物だった。


「ありがとうサーシャ…その気持ちだけで十分よ」

「お姉様にお願いしてお見舞いに来るように言ってみるわ」

「ジャネットはいいのよ」


辛そうに顔を歪めるお母様。
どうしてそんな悲しい顔をするのか解らなかった。


「お母様、痛いんですか」

「いいえ、お母様は何処も痛くないわ」


ぎゅっと抱きしめてくれるお母様。
出来の悪い娘を持ったばかりにお祖母様に責められ続けながらもお母様は優しかった。


厳しい一面もあるけど、お母様は私はこのままで良いと言ってくれたのだ。


「サーシャ、貴女はお勉強が苦手でもこのままでいいのよ。聖女になんてならなくていいわ」

「はい」


望んでもありえないのだけど、私は聖女なんてなりたいと思わない。
だってそんなことしたら家族と引き離されるのだから。


私は今のままで十分幸せだった。
世間で私がなんて言われようとも私は不幸ではないのだから。

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