聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!

ユウ

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1姉は聖女

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豪華絢爛な王宮とは異なり少し古いお邸。
リシュフェール家は由緒正しき家柄で、過去に王族に嫁いだ女性は多く、皆優秀だった。


ただし私はその優秀な部類に入らなかった。


「サーシャ様、また間違えていますよ」

「あ…」

「先日もここで躓きましたね」

「くっ…この数字難しいのよ」

「姉君は優秀だというのに。困りましたわね」


そう、私は勉強が苦手だ。
特に数字に弱く、同年代の令嬢よりも出来が悪い。

天才の揃う一族の中で私だけが平凡…というよりも頭が悪い。
勉強が苦手な私だが、淑女教育も苦手だった。


ダンスも良く足を踏んでしまう。


「サーシャ様、足を踏んでおります」

「あ…」

「何度言えば解ってくださるのです」


「すいません」

ダンスも苦手だ。
淑女教育でダンスが苦手なんて論外なのだけど。


勉強も平均以下、ダンスも苦手な私に家庭教師の先生は今日も呆れていた。


「ジャネット様は華麗なステップですのに」

「どうしてこうも…」

毎日のように先生はお姉様だったらこうだ、お姉様なら簡単にできるのにと小言を言う。


「先生、レッスンはいかがですか」

「論外です。ジャネット様ならばこの程度の事は八歳で習得できましたのに」

「そうですか」


お母様が様子を見に来ては困った表情をする。
先生はここまで出来の悪い生徒はいないと愚痴るのだ。


「これでは社交界で生きて行けませんわ。聖女であるジャネット様の恥に」

「そうね…聖女で王太子殿下の婚約者であるジャネットが」


そうなのだ。
侯爵令嬢であり、今では王太子殿下の婚約者となったお姉様は社交界でも注目を浴びているのだけど。


私があまりにも何もできない所為で、恥となるので社交界デビューをしていないのだ。


実際このまま社交界デビューなんてすればなんて言われるか。


「お母様、失礼します」

「ジャネット…」

「お姉様?」


噂をすれば影。
お姉様が現れたのだけど。


「先生」

「ジャネット様!」

「いかがですの?」

「それが…」


お姉様が現れた事で緊張した表情をする。
お姉様は国一番の美女と呼ばれ他国からも婚約を申し込まれる程の美貌の持ち主だ。


同性の先生からしても見惚れるので解らなくはないのだけど。


「サーシャ、ちゃんと練習しないとダメよ。これではお父様の顔に泥を塗ってしまうわ」

「ごめんなさいお姉様、次はもっと頑張って…」

「頑張るだけなの?そんなの幼児でもできるわ。頑張るなんて当然な事を言わないで。結果が全てよ」

「はい…」


どんなに練習しても私は結果を出せないでいる。
努力するのは当たり前の事なのにその当たり前の事ができていないのだから。


「先生も貴女の為に時間を作ってくださっているのよ」

「はい」

「ジャネット様、私の事はお気になさらないでください」

「そうは行きませんわ」


王宮家庭教師である先生は好意で私の家庭教師を引き受けてくださっている。

なのにまったく進歩がない。

「これではお祖母様の名誉を傷つけるわ」


お姉様の言葉が痛かった。
頑張ってはいるけど、どうしても上達しない。

本当にどうしたらいいのだろうか。


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