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最終章運命の先
35.戦いの後に
しおりを挟む先代聖女でも完全に封じきれなかった悪魔を封じた功績によりエステル一同はさらなる勲章を与えられることとなった。
卒業と同時に、地位を約束された。
平民であるアリス、ジークフリート、サブローは平民でありながら薔薇の勲章を与えられ。
ルークは爵位を与えられ家督を告げなくとも領地と伯爵の地位を持つことを許された。
ヒューバートに至っては聖職者に転職することいなった。
本人に至っては。
「この俺程聖女様の素晴らしさを伝えられるものはいないからな!」
とのことだった。
なんともヒューバートらしかったのだが、聖職者として学ぶことも多く最初から学び直しで神官見習いとのなるのだが道は険しかった。
アリスは宮廷師団に務めながら魔法科学者として配属し、ミシェルは宮廷音楽隊を率いることが約束された。
別名薔薇音楽隊。
全員男なのに女装した団体でミシェルと同じ人種が集まって来たとのことだった。
そしてユランは言うまでおなく王太子の文官秘書兼苦情処理係だった。
「ユラン様!騎士団の方で爆弾が!」
「隣国との会合の書類が!」
「なんでこうなるんだ!」
主に書類の整理に王太子の仕事の補佐だがほとんどが雑用だった。
あげくユランの側仕えは素晴らしい上腕二頭筋の女性だったので精神的にも苦痛が伴っていた。
そしてエステルはというと。
「おい、本当にいいのか」
「ええ」
現在、アルスター公爵邸にいたエステルをクロードは何度も止めていた。
「折角爵位を賜れたんだぞ」
「元より、私は代理を務める気でした。でもお母様のお腹に子が、男の子がいるならば爵位は譲る気でいます」
「別に女が継いでも問題はないだろ」
現在エステルは公爵邸の前に来ていた。
手に持っているのは公爵家を継ぐ証の勲章と剣だった。
あの事件から数か月、ヴィオラの子供は男の子だと解った。
そうなれば爵位を返上し、しばらくは名代として勤めるも跡継ぎにならないことをはっきりさせるつもりだった。
「やはり男性の方が有利なのは否めません。それにまだまだ外では戦争があります。だからこそ私はいずれ女性でも剣や弓を引かなくて済む世界を作りたい。そしてエドワード様とアントワネット様をお助けするには力だけではどうにもなりません」
「エステル…」
これまでの苦労を思うとやるせない気持ちでいっぱいだった。
今でも一部の貴族がエステルに騎士であることも公爵を継ぐことはいずれ王族に反旗を翻すのだろうと思い込んでいる。
そんなことは建前にすぎないのだが、噂は恐ろしい。
噂は人を殺し、戦争に火種にすることもできることを十分に理解していた。
「ですから私はこれから妻として母として、生きてまいります」
「そうか…ありがとう」
騎士として生きて行かなくとも戦うべき場所は変わらない。
悪魔がいなくなっても人の心から悪魔が消えることが永遠にないだろう。
それでもエステルはこれから先悪魔と闘い続けることを誓った。
愛しい人の隣で。
「じゃあ行くぞ」
「はい」
二人は手を取りながら公爵家の扉を開き中に入って行った。
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