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最終章運命の先
31.二つの魂
しおりを挟むすべての手はずは整い、アリスの力が与えられた。
「よし、行くぞ」
「はい!」
アルフォードと視線を合わせ、音色を奏で始めた。
二人は音合わせをしたことがないのに不思議と息を合わせてる。
するとアリスは息を吸い歌を歌い始める。
「この歌は?」
「知らない言葉ね」
聞いたことがない言葉だと誰もが思ったが、王族の二人だけはこの歌の意味を知っていた。
「これは昔の言葉だ」
「ええ、知ってます。この意味を」
遠い昔に捧げられた歌を二人は知っていた。
「我が愛し子よ、この地を生きる者」
「この空の下で生きる可愛い愛しい子に継ぐ、これから先困難が待っていようとも…」
歌を聞きながら言葉を訳して行く二人の目から涙が流れた。
この歌をかつて歌った聖女に、聖女に想いを託した女神は確かに存在していた。
「「道に迷った時、風がお前達を導くだろう。そして何があろうとも前に進み息よ…善と悪が一つとなりて心となる。その心を大切に育み生きるのだ…我が愛しい子達よ」」
二人は胸を溜めながら霧が晴れるかのようだった。
「そうだ…俺はあの時戦場にいたんだ」
「僕もいました。前世で僕達は聖女と共に戦っていた」
一人は聖女を常に守り支え縦となる騎士。
もう一人は聖女の後ろ盾となっていた王子として。
二人は確かに側にいた。
「エドワード様は恐らく聖女様を庇護した王子の末裔です。そして聖女の子孫に当たる方」
「ロバート様?」
「これで謎が解けました」
ロバートはルークに支えられながらもしっかりした口調で告げられる。
「貴方様が女神様より鍵を与えられ、その鍵を使えたのは聖女様の力を少しだけ引き継いでいたからでしょう。でなければ合点がいきません。黒騎士と白騎士よりも早い段階で時を超える…それだけの加護を得ていたことになります」
「だが、それなら何故…」
同じく半分血を受け継ぐクロードは記憶を引き繋がなかったのか。
「恐らく記憶を引き継ぐなかったのは女神様の意図する行動か、それとも聖女エルキネスの力が働いたのかもしれません」
「ですが解りません。何故聖女の力を二つに分けたのでしょう?最初から一つにすればいいモノを」
祈りの力と闘う力を一つにした方がいいとさえ思うジークフリートだったが…
「力を分けなくては危険だったと判断されたからなのかもしれません」
「ああ、それに…聖女だけでは封印はできないからな」
かつて封じた悪魔の力は強大で、長い月日を経て力は増している。
「悪魔は知恵をつけ、外側からも内側からも攻撃をしかけるなら、双方に守りを固めなくてはならない」
その為にも魂を二つに二分したのだと思ったクロードは全ての答えを導き出した。
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