ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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最終章運命の先

9.最も不幸なのは

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対峙する二人は双方が反発しあっているようにも見えた。


(私達は決して交わらないのね)


何時から違ってしまったのか。
どうして姉妹として育ちながらも一度も解り合うことはできなかったのか。


「何故貴方は自分で破滅の道を選んだの?」

「何を言っているの?」

「貴女は私から全てを奪って来た。それは貴方自身が望んだことなのに…どうして私にすべて奪われたような表情をするの?貴方は欲しい物をすべて得て来たと言うのに」

時が逆行する前からヘレンはその手にすべてを掴んできた。
両親から愛され、愛しい人の心に、最後は公爵令嬢としての地位と公爵家の後継ぎという地位。

誰もが欲しがるものを手にしながらも、まだ欲しがっている。


「その上まだ欲しがって…貴方はどうしてここまで欲が尽きないの。いいえ違うわね」

「何を言いたいの」

エステルはずっと考えていた。
ヘレンは常に欲望を抱き手を伸ばし続けていても本当の意味で心が満たされたことはあったのだろうか。

結局前世では、王族に貴族は国民の手によって処刑された。
ある意味エステルはその最悪な結末を目の当たりにせず、この世を去ったので不幸中の幸いと言えるだろう。


いくら王政が変わったとしても、民主主義を貫く国民達がヘレンやカルロを支持するわけがない。

(運命に翻弄されたのはヘレンも同じ…)


ここまで歪んでい待ったのは、ラウルやジュリエッタの教育があまりにも歪んでいたこともある。

厳しく接することなく、ヘレンの我儘を増長させてしまったことが原因だったが。


選んだのヘレンだった。


「私は今になって貴方を憐れに思います。本当の意味で愛情を得ることもなく、利用され最後は悪魔に取り憑かれるなど…可哀想な子」

「お前が!!お前が私を哀れむな!!」

エステルの言葉はヘレンのプライドを傷つけるに十分すぎた。

怒りに身を任せ雷撃がエステルに襲い掛かる。

「うっ!!」

「アンタさえいなければ私がすべてを得るはずだった…何でアンタが今更!当て馬にすぎない癖に何でよ!今度こそは全て私のモノになるはずだったのよ…何で惨めに死ななかったのよ!」

ヒステリックに叫ぶヘレンは何一つ上手く行かなくなってしまったことをエステルの所為にした。

「私は神に愛された聖女よ!ヒロインなのよ…無条件で愛される存在なのよ!」


怒り狂い叫ぶヘレンは首から下げていた黒い鍵を握りしめる。


「この鍵で私は全てを取り戻す!そうよ…お父様もお母様も私の為に存在する」

「ヘレン!貴方…」


エステルはヘレンが最もしてはならない罪に手を染めたことに気づいた。

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