ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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最終章運命の先

6.アリアナの正体

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憎しみがざわめき、心が真っ黒に染まって行き、本来の姿に戻る。


「ヘレン…」

「いや、アイツは既にに人の姿をしていない」

姿はヘレンであるが、美しいとは言えない禍々しい気を纏っていた。
黒い霧に包まれ、美しかった金髪は黒に染まり、目は赤く血の色をしていて、まるで妖魔のような恐ろしい姿をしていた。


「アンタの所為で…アンタさえいなければクロード様は私のモノだったのよ!」

「何を言っているの?」

「アンタは死ぬはずだった!惨めに生きて死ぬはずだったのに…何で邪魔するのよ!アンタは当て馬で私を引き立てる存在だったはずよ…なのに後の時も今も邪魔して!」


ヘレンの言葉に気づく。

あの時とは逆行するまえの時間の事だった。


「やはり記憶を取り戻したか」

「どうして邪魔をするのよ!お前だって私の邪魔をして…最後まで私に歯向かって!」


ヘレンはエドワードも睨みつける。
全てが上手く行かなかった、何故自分に逆らうのか。


「何様だ。お前ごときが身の程を弁えろ!」

「うるさい!私はお姫様よ…ヒロインなんだから!誰からも愛される存在なんだから」


「それは違います!」


押し黙っていたアリスが睨みつけ光魔法をぶつける。

「きゃああ!」


闇と光は正反対であり、闇を消すことができるのは光のみ。
アリスは浄化能力を使って闇の力を照らす。


「愛は見返りを求めません。エステル様は一度だって求めるだけの愛し方をしていませんでした」


ただ愛されるだけを望み、自分への愛しかないヘレンの愛は自分勝手なモノだった。
愛は求めるだけでなく与えなくてはならないことを学んだアリスはヘレンの間違いを正す。


「貴方の愛は自分への愛しかないわ!そんな身勝手なのは愛じゃない!エステル様は一度だけって見返りを求めたことはないわ!」


「黙れ!この悪魔が!」


全てを奪い、ヘレンが窮地に追いやられている原因は全てエステルが悪い。
魔力で心を支配されているのだと思い込みエステルこそが悪女だと思い込むヘレンだったが、静観していた彼等はエステルを守るように前に出る。



「悪魔はどっちと!おまんの方がずっと汚れとる!」

「そうです!エステルさんは誰よりも気高く優しい天使のような人です」

「貴方のような性格ブスに言われたくありませんね!エステルさんと同じ人間と言うだけでも身の程知らずですよ」

サブローに続きルークとジークフリートもヘレンに反論する。
彼等はずっと孤独だった。
学園でも浮いた存在で友人もいなかったが、エステルと出会ってから居場所を得ることができた。


すべての始まりはエステルとの出会いからだった。


「自分が傷づいても他人に手を差し伸べる程の救いようのないお馬鹿さんがエステルさんです」

「えっ?」

「そうです!詳しい事情は知りませんがエステルさんは少々天然でボケボケですけど」

「いや…」

「そうと!むぞらしか姫様だっちゃ!」


庇ってくれているのだろうが、貶されているような気分になるエステルだった。


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