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閑話エドワードの狂詩曲
11.法案
しおりを挟む日に日に国の財政は圧迫される中、アントワネットは変わらず贅沢ばかりしていた。
言い方は悪いかも知れないが、王妃として最低限の矜持を守るには衣装は武器となる。
元から美しい者が好きなアントワネットはおファッションリーダーとしての役目を果たし、社交界に新たな流行を生み出すことに欠けては天災だったがそれが仇となっていた。
とは言え、国の財政に耳を傾けられないのはアントワネットの責任ではなく側仕えの者があえて口にしなかったことが原因でもある。
そもそも国の財政を危惧している侍女などいなかった。
本当の意味で国を憂いでいる貴族がほとんどおらず、心ある貴族は次々と高位貴族に追放されていた。
文字通り国を乗っ取ろうと悪だくみを考えていたのが貴族派だった。
貴族派筆頭のバルトーク公爵やその臣下達はどうにかしてアントワネットの評価を下げるべく奔走していた。
その結果は確実に王家を蝕み、国の財政を悪くさせていたが、国民達の不況を買うには十分だった。
ただし、アントワネットの贅沢などは可愛いものだった。
元から赤字だった財政でアントワネットが使った費用は本来王妃に与えられる資金の範囲内だったが、書類を偽造し、側仕えなどが使っていたのだ。
国の赤字の責任はアントワネットが浪費したとの噂を流し、国民は今日食べるパンですらない状態に噂を流せば彼等の怒りは王家でも国でも、貴族でもなく、アントワネットに注がれてしまう。
そのことが切っ掛けで城下町では不穏な動きを見せるようになっていた。
スラム街が増えるいっぽうで王都は未だに華やかな暮らしが続き、我慢できなくなった一部の平民が貴族の邸を襲う日が続くようになった。
「また放火か…」
不穏な噂な噂は度々耳に入って来るようになり、エドワードはクロードの言葉を思い出し不安を抱く。
「国民が僕達に不満を抱くのは解る」
書類を握りながら、唇をかみ締める。
日に日に圧迫される財政の中、社交界の貴族令嬢や貴族夫人は未だに贅沢な暮らしをしていたのだから。
「このままでは国民が…国が」
どうにかして救済措置を取らなくてはならないが、手が出せない状況下に陥っている。
「来月の晩餐会でこの案件を通さなくては」
随分昔から考えていた、貴族に税を払わせる法案。
貧しい国民だけに税を払わせるのではなく、貴族にも税を払わせる法案を考えた。
せめて国民の負担がこれ以上増えることがないようにと…
「もう他に手はないのだから」
藁にもすがる思いだったエドワードだったが、その思いは叶うことはなかった。
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