ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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閑話エドワードの狂詩曲

9.王兄殿下

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あの舞踏会以来、アントワネットとヘレンの関係は悪化の一途を辿った。


元よりヘレンは増長し、自分にひれ伏せない者はない。
傲慢な考えた方をするようになり、侍女や、取り巻きにも当たり散らしていた。


それでも公爵令嬢である為、苦言をモノ申すことなどできない。

ヘレンに歯向かう者はいなかった。


だからこそ勘違いをしていた。
アントワネットが無礼を働き続けることは許されない。

公爵家に対して軽んじていると言い出したのだ。


「陛下、このところアントワネット様の素行の悪さは目に余りますぞ」

「素行…王妃が何かしたかな?」

早速文句を言いに来たのはラウルだった。

「何をですと!我が娘を無視し続け公爵家に泥を塗ったのですよ」

「無視とは大げさではないか」

そこに言葉を挟んだのは、久しぶりに王宮に現れた王兄殿下だった。


「兄上?」

「帰って来て早々子供の喧嘩をしていると聞いてな…」

「子供!」

その言葉にカチンと来るラウル。

「公爵代理ともあろう方が、子供同士の揉め事に口をはさむのはいあささか過保護すぎるとおもうのだがな」

「子供同士ですと!アントワネット様は我が公爵家を愚弄し、娘に…」

「愚弄…ねぇ?」

表情を一切崩さない王兄殿下こと、クロード・モントワールは動じることがなかった。


「どのような愚弄をしたんだ?俺が聞いた話では会話らしい会話も接触もない…手を下すようなことをしたのか?」

「ですが…」

「ないのだろう?それに貴公は一国の母に対して随分と偉そうだな」

「は?」


余裕の表情を崩さないラウルにクロードはさらに告げる。


「本来貴族社会では高位な身分の者に礼を尽くすのが常識だったにも関わらず、ヘレン嬢は先日のお茶会で王妃殿下がいるにもかかわらず前を素通りしたと聞く」

「なっ…」

「あげく、舞踏会で赤いドレスを着たようだな。まるで自分が女王とでも言いたげだと…噂になっているが」


先日のお茶会は、王妃主催のお茶会だった。
アントワネットが初めて王妃になって開いたお茶会だったが、その日ヘレンは真っ赤なドレスを着て、自分が女王とでも言わんばかりに目立っていた。


「他国では王妃のお茶会に家臣が悪目立ちしていると嘆く声も出ているが…貴公はどうお考えか」

「他意はございません」

「そうか、では偶然か」

「もちろんです」

冷や汗をかくラウルはクロードの冷たく突き刺さる視線に動けなくなる。


「まぁいい…くれぐれも己の身分を理解するように娘に伝えよ。アントワネットはもう妃殿下ではなく国母であり、王妃であり我が国の母。子が母を敬えぬとあっては国自体が崩壊する」

「はっ…ハッ!」


「話は終わりだ、下がれ」

「失礼します」


ラウルは唇をかみ締め気づかれないようにクロードを睨みつけ部屋を出て行った。


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