ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第十学園祭の騒動

19.冤罪された少女

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光が差し込み、エステルは目を覚ます。


「んっ…」

「エステル!」

目を覚ましたエステルに安堵するクロード。


「えっ…」

「地下の部屋で急に意識を手放したんだ。覚えているか?」


記憶が途中から曖昧だった。
所々覚えているのは、あの時絵を見た後に――





夢の中で知らされた哀しい過去。
塗り替えられた聖女の最期を教えられたのだ。



「クロード様」

「何だ?」


「クロード様は聖女エルキネスが眠っているお墓を御存じですか?」


「空っぽの墓ならばな?」


クロードの言う空っぽのお墓は慰霊碑の事を言っている。

「聖女の最期を御存じですか?」

「王族でも聖女の最期を正確に把握はしていない…だが」

言いにくそうにするクロードも、国の影を知っているのようだった。


「聖女は病気で亡くなったのではないのですね」

「エステル…何故それを」

クロードは、国にとって重要な役割を果たす聖女を調べていた。
当初は聖女に関して必要最低限しか調べていなかったが、ここ一年程は聖女に関する情報を得るために王立図書館だけでなく、聖女のゆかりの地に向かい調べていた。


「聖女は殺されたんだ…火炙りの刑で」

「異端者として魔女にされたのですね…聖女が邪魔になった貴族達と敵国が通じて」

「ああ」

当初聖女を庇護していた王子がいた。
国の救世主として戦い、身を捧げた聖女の存在は大きくなりすぎた。

兵団を率いる程に。
その存在を疎ましく思い、一部の貴族が共謀して敵国に売り渡した。


そして最後は裁判を行われるも、一方的な裁判だった。
聖女側に弁護士もいなければ弁護してくれる人間もいなかったのだから、判決は解り切っていた。


ただ、魔女と判断されても確実な証拠はない。
死刑にまで持っていくことが困難だったことから司祭達はエルキネスを魔女に仕立て上げるべく知恵を絞った。


「エルキネスは…」

ぎゅっと、クロードの服を掴み顔を俯かせた。


処刑されるにいたった原因。


司祭に罠にかけられたエルキネスがされた仕打ちを聞かされた。

あの時絵を見た時から、微かに聞こえた罵倒する声と一緒に見えたのは男達の手だった。

純粋で汚れを知らない少女を地下牢で男達は抑え込み。



「聖女は男達に凌辱されたのですね」

「エステル…」


余りにも酷い仕打ち。
清らかな体を守り処女であった聖女だからこそ価値がある。


ならば聖女を偽った魔女として仕立て上げ、人々を惑わす悪女にすればいい。
聖女を魔女として、この世に災いを招く存在にした。


「聖女としての、女性としての矜持を傷つけられた彼女の苦しみはどれほどか」

「聖職者なんて言っても、所詮はクズだ」

本当に国を思っていた者が犠牲にされ、甘い汁だけを啜っていた人間が得をする。

そんな世の中に反吐が出る。


「エドは聖女としていない。聖女が見つかれば利用される…二度と悲劇を繰り返さないために」

「クロード様」

「だから、何が何でも国内で内乱はさせない。聖女も必要ないようにする」


国が乱れる時、聖女が必要になるかもしれない。
ならば国が乱れなければ聖女を必要としない、絶対に必要としてはならないと言い聞かせていた。


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