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第十学園祭の騒動
閑話2お尻叩き
しおりを挟む季節は秋になり、クロードは収穫祭の準備に追われていた。
国内で収穫祭は大事なイベントなので抜かりはなかったが、窓を何度も開けては閉めている。
「殿下、そんなに窓を見つめても手紙は来ません」
「解っている」
「では、早く席について書類を一時間以内に片付けてください」
今日も手厳しい侍従に促されて書類を片付けていた。
(くそっ‥ユランの奴め!)
最近ユランからエステルについての報告が来ずイライラしていた。
エドワードの側仕えとなってから忙しいのは解るが、報告を怠ることは仕事をおろそかにする行為だと思っていた。
(エステルはどうしているだろうか…)
卒業までエステルの帰りを待つ時間がとても長く感じる。
「なんて腑抜けですのクロード」
「げっ…母上」
窓をボーっと見ていたら音もなく背後から現れるモントワール侯爵夫人にビクつく。
「何ですその顔は?実の母親に」
「ならばノックぐらいしてください」
「その程度で驚くなんてなんて情けないのでしょう?気配で察しなさい」
「無茶を言わないでください」
午後の執務は荒れそうだったので、諦めるクロードは適当にあしらって帰ってもらおうと思っていたが…
「あら?そんな態度でいいんですの?」
「何がです?」
また新しい嫌がらせでも思いついたのかと思った矢先、一枚の写真を見せられる。
「なっ!!」
「可愛いでしょう?貴方の愛しの姫君のメイド姿」
「何ですこれは!」
渡された写真はピンクと白とメイド服を着たエステルだった。
普段から男装をしているエステルはドレスも行事の時だけだったのでかなりプレミアムものだった。
「ええ、エステル様のクラスは喫茶店をするそうですわ」
「えっ…」
「しかも花街風で接待するお客様にご主人様とかいうらしいようで」
「何!」
クロードの顔つきが変わる。
「こんなに可愛らしいエステル嬢にお世話をされたら大変ね?あわよくば別のお世話をさせられますわ」
「母上…」
ワザとクロードを煽るモントワール侯爵夫人を睨みつける。
(この性悪が!!)
エステルに会いたくても会えず我慢しているクロードは心の底から母親が憎らしくなった。
本当なら真っ先にエステルのメイド服を見たいが、公務があるので難しかった。
「あら?学園祭に行かないの?」
「そんな暇ありません」
「そうですの?エステル様から招待状が届いたのに」
思わず万年筆を握りつぶしてしまった。
「はい?」
「学園祭に来て欲しいと、招待状が来てますわ。ダンスのお相手を貴方にお願いしたいと…でも行かないならエドワード様に行っていただきましょうか」
「行くに決まっているでしょう!」
エステルからの誘いなら断るわけには行かない。
何が何でも仕事を終わらせて見せる。
「前倒しで仕事を片付ける!!」
机の前の山のような書類を片付けるべくクロードは馬車馬の如く働くのだった。
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