ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第十学園祭の騒動

3.攫われたユラン

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「なんというか…」


一部始終を聞かされたエステルは、アリアナに同情した。

人を呪わば穴二つという言葉通りだった。
散々悪事を働いていたのだから自業自得ではあるのだが、少しばかり哀れになった。


「災難だな、魅了魔法を失敗して虫に襲われるとか!」

「まぁ、雄なら良かったのよね」

「雌だったのが問題です」

魅了魔法は異性にこそ効果はあっても同姓には効果がない。
魔物であればどのような影響が出るか解らないし、敵対心を持つ同姓だったら嫌悪感を抱く可能性だってある。


「あのキャタピラー、なんだか」

「ええ、本来は大人しい魔物なのに凶暴化したのは魅了魔法の所為よ」

「ここまでくると哀れだな…まぁ、いい薬だよな!」

他人事のように言い、自分は関係ありませんという顔をしているユランはすっかり忘れていた。


「ユラン、そんなことを言っていていいの?」

「何が…ん?」

天井からゆらりと糸がたらされる。


「えっ…うお!」

糸は一瞬にしてユランを拘束してしまった。


「なんだぁ!」

「ユランさぁぁぁぁん!!」

ルークが悲鳴をあげるも、既に遅かった。


(嘘だろ?これって…)


今までのパターンを想定すれば安易に想像がつく。
この後どうなるか。


「シャァァァ!!」

「いやぁぁぁ!!」


嫌な予感は当たる物で、犯人はジョセフィーヌだった。


「わぁー、お約束的展開」

「本当にね…って、仲間が寄って来てるわよ」

感心しながら見ていたら仲間が群がって来た。

「あら?全員女の子じゃない?」

「はい、ナイスバディーですね」

「ユラン、良かったわね」


ルークだけがユランを哀れに思っていた。
いくら巨乳であっても相手は魔物で蜘蛛なので嬉しくもないだろう。

むしろ恐怖でしかない。


「お前等薄情だぞ!助けろ」

「ちょうどいいじゃない?学園祭のダンスの相手をしてもらったら?」

「貴族に見初められる前に彼女に見初められたわね」


助けるという選択肢はすでになかった。
ユランはルークに涙目で訴えるも、申し訳なさそうな表情で手を合わせる。


「ルーク!」

「すいませんユランさん。ですが僕の力量ではユランさんごと燃やしてしまいます」

ジョセフィーヌが密着しているのではユランも巻き込まれるので下手に魔法を使うわけにもいかないし、剣でも同じだった。


「お前等…ひぃぃ!」

薄情な仲間に文句を言おうとしたが、ジョセフィーヌが目を輝かせユランをさらに抱きしめ舌で嘗め回される。


「やめてぇぇぇ!!」


ただでさえ大嫌いな蜘蛛なのに抱きしめられ嘗め回されるなんて殺された方がマシだった。


「過激ね」

「ええ、積極的だったのね」

エステルとミシェルは関心たように見ながらふと思った。


「このまま食べられたりしませんか?」

「おいぃぃ!!変な想像してんじゃねぇよ!キモイわ!」


仮にもこのまま事が進めばと、危険な想像をするエステルだったがアリスは曇のないない瞳で告げた。


「赤ちゃんができたら教えてくださいね!」


「できるわけねぇだろ…って、何照れてんの!」

隣でモジモジするジョセフィーヌは恥じらう乙女のようだったがユランを拘束する糸は緩まることはなく、もう一本糸を出して上に移動していく。


「ちょっ…待て待て!」

「シャー!」

「シャーじゃないだろ!」


ユランはそのまま巣まで連行されて行った。


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