ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第十学園祭の騒動

2.さらなる裁き

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アリアナが体調不良で授業を休んだことにより、二人一組でペアを組んで課題を発表することが困難になり問題が起きた。


当初、一緒に組んでいた女子生徒は大人しい性格だった。
成績も上位ランクで銀クラス候補と言われていたが魔力はそこまで高くなく魔法研究員希望だった。


今回の課題は回復薬ポーションの改善についてだった。
通常は王立研究所で回復薬ポーションの研究をするのだが、メトロ学園でも研究を行い。

良い研究材料があれば提供する。
品質の向上が叶えば採用をされ、生徒も評価される仕組みになっている。


運が良ければ王立研究所の学者から推薦を貰い、卒業と同時に王立研究所の見習いとして働く事ができるのだ。

魔力が少なくとも十分に出世の道が開けるのだが…


「何よこの研究!知らないわよ」

「でも、アリアナさんは休んでて」

「私の言ったとおりにしなかったの?こんな回復薬ポーション!」


最初の打ち合わせとは異なった回復薬ポーションに文句を言う。

「でも前のじゃ、回復力はあまりないし…それに体の負担がかかると思うの」

現在の回復薬ポーションは外傷的なものは回復できても風や熱などを完全に治すことはできない。

むしろ飲み続けると免疫力が下がったり、人間が本来持つ免疫力や治癒力を下げてしまう。

あげく、アリアナは考えた薬には薬草を使い過ぎるのだ。

「薬草は高価すぎるわ…そんな効果ものを平民は買えないし」

「うるさいわよ!出来損ないの癖に私に意見する気!魔力のもない役立たずの癖に!」

アリアナは感情のままに言葉を口にし、魔力が少ない人間を馬鹿にした発言をする。

「アンタなんて植物の研究だけしてればいいのよ…どうせ出世なんてできないわよ」

「そんな…酷い」


唇をかみ締め涙を浮かべる。
ずっと努力して来たのにその努力を踏みつけられた気分だった。


アリアナが席を立った瞬間に作った回復薬ポーションは床に落ちて割れる音がした。


「そこ、何をしている!」

「彼女が!」

アリアナは責任を押し付けようとするも、他の生徒が口々に言う。


「自分が休んでいた所為で課題が滞っていたのに」

「パートナーにあんなことを言うなんて」

「酷いな」

ヒソヒソと囁くクラスメイト。
先程の会話はばっちり聞こえていたので言い訳をしても意味はない。


「ドリスターさん、貴方は授業を欠席し、フォローをしてくれた友人に対して罵倒を浴びせるとは問題ですね」

「でも…彼女が!」

「アリアナさんは課題を出された時も、支持を出すだけで何もしてませんでした!」

「なっ!!」

言い訳を並べようとしたアリアナだったが、即座に一人の女子生徒が告げる。
課題を出された時、難しい配合はパートナーに押し付け材料を入手するのも他人任せだった。

「そうよ…彼女は一人で材料を探しにっていたわ」

「その間サボってるの見たんだから!」

教室全体が騒がしくなる。
女子だけでなく男子も冷めた視線を送られ、アリアナはまずいと思い、急いで魅了魔法を使った。


「私…そんなことしてません!」

涙を潤ませ教師や、他の男子生徒に強力な魅了魔法を使おうとしたのだが‥‥


「ピー!」

「へ?」

魅了魔法を間違えてホルマリンに入っているキャラピラーに魅了魔法をかけてしまった。


「何でホルマリンが割れているんだ!」

周りは回復薬ポーションが零れていた。

その所為でホルマリン漬けになっていたキャタピラーは動けるようになり、しかも魅了魔法の所為で凶暴化していた。


「きゃあああ!来ないで!」


「ピー!!」


回復薬ポーションの所為で元気になったキャタピラーは足も速くなり、アリアナの頭に乗り牙を立てていた。


「気持ち悪い!!」

毛虫がだ嫌いなアリアナはそのまま教室を出て逃亡した。


「自業自得ね」

「でも、このままだとキャタピラーが」

「そうね。捕まえましょう」


仕方なくミシェルとアリスは虫取り網を用意して後を追いかけるのだった。

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