ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第九章辺境の聖女

28.動き

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ある日を境にアリスは変わった。

第三者から見れば変化は解らないが、エステル達からすれば変化が見えるのは明らかだった。


「ヒューバートさん」

「ん?なんだ?小娘」

礼拝堂に向かうヒューバートを呼び止める。

「聖女様のことを詳しく知りたいのですが…」

「フッ、平民の分際で中々勉強熱心ではないか」

「前置きはいいのでお教えください」

「良かろう」

さりげなく馬鹿にされているのに気づかずヒューバートは聖女伝説がより詳しく解る本が置かれている場所を教えた。


「ありがとうございます」

「フンッ」


一応お礼を言って戻って来る。


「最近、あの子…良く調べ物をしているの」

「ええ、よく図書館にいたり。哲学担当の先生に質問をなさってますね」

同じクラスのミシェルと、選択科目が同じジークフリートも熱心に調べ物をしていると聞かされる。

元から努力家だったアリスだが、ここ最近は鬼気迫るようなものを感じていた。


「聖女と一緒に悪魔や闇魔法についても調べていたわね」

「はい、後は呪いに関することなども」


「え?」

どうしていきなり授業に関係ないことを調べ始めたのだろうか。


「そういえば最近アリスはやたらとスキンシップが激しいのよね」


「確かに、休み時間や、暇さえあればアンタに抱きついているわね」

「ええ…まぁ、殿下いらっしゃらなくて良かったですね」


今の光景をクロードが見たら非常にメンドクサイことになるのだから。


「ふわぁー…」


「ユランさん、どうしたんですか?」


さっきから会話に混ざらずボーっとしているユランはあくびをしていた。


「そういえば、昨日も夜更かしていたの?」

「ああ、まぁな」

「授業もサボっていましたが、どうしたんですか?」

「あー…なんでもねぇよ」


実は王宮と学園の往復に、アリアナを調べるために徹夜だとは言えなかった。


「ちゃんと寝ないと体に悪いわよ」

「ああ…問題ねぇよ」


エステル達には内密で調べ物をしているので話すわけにはいかない。


(こっちは、こっちでひと騒動ありそうだな)


アリスが動き出した。
何かあったかは解らないがアリアナに対してアリスが敵対心をと危機感を持ち始めたのは確かで何かが動き出そうとしている。


(エドワード様も本格的に動き出したからな…)


ユランは学園と王宮内で着実に動き出す影に気づく。


「エステル、気をつけるのよ」

「え?」


「学園でもアンタを狙う連中がいるんだから」

目を細め明後日の方向を見るミシェルはエステルに忠告をする。

近くで騒々しい声が聞こえアリアナが来る気配を感じていた。


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