ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第九章辺境の聖女

15.失恋男に乾杯

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「なんなんですか彼女は!」

放課後、生徒会室にて。
何時ものメンバーは集まって愚痴り大会が行われていた。


「何よ、なんかあったの?」

書類を片手に紅茶を楽しむミシェルにジークフリートはこれでもかと言う程、愚痴を零す。

「彼女は態々クラスに来て、エステルさんの悪口をくっちゃべっているんですよ!」

イライラすしながらも書類に判子を押す手は休めない所が、彼らしい。

「僕も今日絡まれました」

「あー、聞いたわよ。でもヒューバートに助けられたんですってね?」

「馬鹿も役に立つと」


今日の昼頃のやり取りを思い出しながらうなづくルーク。


「僕、初めてヒューバートさんが頼もしく感じました」

「馬鹿だけどアイツ、聖女様の信者でしょ?そんでお坊ちゃん育ちだからああいうのは嫌いよね」

「まぁ、彼の好みは誇り高く凛として美しい女性ですね」

「ええ、後は少し生真面目なの」

ヒューバートの好みを言い当てる二人だったがルークはお茶を吹き零した。


「ゲホゲホ!!」

「大丈夫ですか?ルークさん」

「はい…」

アリスは急いでハンカチで拭くもあルークの顔色は悪かった。
なんせミシェルとジークフリートの言うヒューバートの好みとやらに該当する人物が一人だけいるのだから。


「アンタ今更よ?ヒューバートがあの子に惚れているなんて」

「あれでしょう?好きな子に突っかかる」

「まぁ、宇忠一身分違いな片思いよね?公爵令嬢で王子妃に惚れるなんて」

「ええ、卒業したら彼女は結婚するのに哀れな」

「なんだか、ヒューバートさんに優しくしてあげたくなります」

ルーク以外は言いたい放題だった。
ヒューバートの気持ちを知らなかっただけにショックも大きく仲間外れにされた気分が大きかった。


「心配しなくてもエステルだって気づいていないわよ」

「ですよね…」

「まぁ、本人も自覚しているか怪しいけど」


お茶をもう一杯飲みながら窓を開けると。


「おのれぇ!エステル・アルスター!俺ともう一度勝負しろ!!」

「もう、仕事に戻りたいのですが」


外ではヒューバートに勝負を申し込まれていた。
既に乗馬対決はエステルの連勝だったが、勝つまで続けると言ってしつこかった。


「おい、何時まで続けるんだよ」

「俺が勝つまでだ!!」


落馬を繰り返すあまりヒューバートはボロボロだった。


「アイツも懲りないな」

「ええ、正真正銘の馬鹿だけど」


一同は馬鹿すぎるが、あそこまで一途だと哀れなのを通り越して尊敬してしまう。


少しばかりホンワカとしていた時だった。

「ルークさん!」



生徒会室の扉が開かれ、了承もなしに入って来たアリアナに一同は舌打ちをした。


(((この女!)))

生徒会室に勝手に入り尚且つ差も同然の表情をするアリアナに嫌悪感を通り越して殺意を抱く彼らだった。


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