ある公爵令嬢の生涯

ユウ

文字の大きさ
上 下
289 / 408
第九章辺境の聖女

3.光の保持者

しおりを挟む



この世界には四大要素となる魔力が存在する。


精霊の長を務める四大精霊を指していた。


水、炎、風、土の要素だった。
それらの要素と対等となる特殊な属性が光となる。

攻撃力こそ弱くとも癒し魔法は最高レベルだった。
魔を浄化し、封印することもできる特異稀な能力で、初代聖女も光魔法を使って魔を封じていたと聞かされている。

殆ど伝説となつていたが、光魔法を持つ者は女神の加護を得ているといつしか言われるようになり。

現在では光魔力保持者は特別だった。
ただし、光魔力を持つ者は世界に一人だけとされており。

現在光魔力を持つのはアリスだけのはずだった。


‥‥にもかかわらず、同じ光の魔力を保持しているのはおかしいのだ。


「どういうことかしら」


生徒会室にて、エステルは調べ物をしていた。


気になったので噂の転入生を調べていた。

伝説では聖女が君臨しない時代でも光の魔力を持つ人間は一人だった。


「アリスは光の魔力を持っているのに」

同時に二人存在するなんて聞いたことがない。

逆行する前の記憶を思い出すが、当時は世間と隔離されている状態だったので欲しい情報を得ることができない。


「光の魔力ではなくそれに近しい魔力と言うことかしら?」

思考を巡らせながら思い当たる節があった。


(確か浄化能力を受け継いだ者はいたわ…)

記憶の片隅に封印されていた辛い記憶だった。


そうエステルの身近に光の魔力に似た魔力を持つ者がいた。





「確かヘレンも癒しの魔法を使えていたはず…」


まだ五歳にも満たない頃。
ヘレンは精霊の恩恵を受けたのだ。

ただし癒しの魔法と言っても治癒師程度の魔力で宮廷魔導士に通用する程の魔力ではなかった。

それでも元両親は幼い内に魔力に目覚めたヘレンに大喜びし、勝手に盛り上がり未来の聖女になるだと豪語していた。

そのやり取りをただ見ているだけだったが…


当初、光の魔力を受け継ぐことはなくとも治癒師の才を持つ子供は何人もいたのだ。
ただヘレンは、他の子供よりも魔力に目覚めるのが早かっただけにsぎなかったのだが、当時エステルは体の弱さから魔力に中々目覚めずにいたことから元両親に魔力を授からなかった悪絶たずのレッテルを張られていた。


ただ時期が遅かっただけなのだが…


(あの時は気にも止めていなかったけど)


光の魔力を受け継がなくとも似たような魔力を受け継いでいるのかもしれない。

もしかしたら、今生で二人の光の魔力を受け継ぐ者が現れた可能性がある。


「後でアリスに聞いてみようかしら」

クラスはアリスと同じはずなので、話を聞くこともできる。

科も同じだし、面倒見のいいアリスはきっと転入してばかりの生徒の面倒を見てくれているだろうと思い、昼休みまで待つことにしたのだが…


パリン!


「え?」


生徒会室に置かれているカップに皹が入る。


「おかしいわね、新調したばかりなのに」

全員おそろいのティーカップは数日前に購入したばかりだった。
お気に入りで、生徒会役員全員はこのカップを愛用しているのだが、何故かエステルのカップに皹が入っていた。


「危ないわね…」

間違って使ってしまっては大変だと思い、その時は特に気にしなかったのだが。


「あら?さっきまでいいお天気だったのに」

太陽が隠れすっかり暗くなり雨が降り出し始めた。

「ミシェル様の占いが外れるなんて珍しいわね」

今日一日は晴れだったと聞かされていたので少し違和感を感じながら、エステルは書類を片付ける。

昼休みは生徒会がそろって生徒会で昼食を取る予定なのでお茶とお菓子の準備をして出て行く。


その陰で誰かが見ているとも気づかずに。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私を忘れてしまった貴方に、憎まれています

高瀬船
恋愛
夜会会場で突然意識を失うように倒れてしまった自分の旦那であるアーヴィング様を急いで邸へ連れて戻った。 そうして、医者の診察が終わり、体に異常は無い、と言われて安心したのも束の間。 最愛の旦那様は、目が覚めると綺麗さっぱりと私の事を忘れてしまっており、私と結婚した事も、お互い愛を育んだ事を忘れ。 何故か、私を憎しみの籠った瞳で見つめるのです。 優しかったアーヴィング様が、突然見知らぬ男性になってしまったかのようで、冷たくあしらわれ、憎まれ、私の心は日が経つにつれて疲弊して行く一方となってしまったのです。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!

水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。 シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。 緊張しながら迎えた謁見の日。 シエルから言われた。 「俺がお前を愛することはない」 ああ、そうですか。 結構です。 白い結婚大歓迎! 私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。 私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

愛されない私は本当に愛してくれた人達の為に生きる事を決めましたので、もう遅いです!

ユウ
恋愛
侯爵令嬢のシェリラは王子の婚約者として常に厳しい教育を受けていた。 五歳の頃から厳しい淑女教育を受け、少しでもできなければ罵倒を浴びせられていたが、すぐ下の妹は母親に甘やかされ少しでも妹の機嫌をそこなわせれば母親から責められ使用人にも冷たくされていた。 優秀でなくては。 完璧ではなくてはと自分に厳しくするあまり完璧すぎて氷の令嬢と言われ。 望まれた通りに振舞えば婚約者に距離を置かれ、不名誉な噂の為婚約者から外され王都から追放の後に修道女に向かう途中事故で亡くなるはず…だったが。 気がつくと婚約する前に逆行していた。 愛してくれない婚約者、罵倒を浴びせる母に期待をするのを辞めたシェリアは本当に愛してくれた人の為に戦う事を誓うのだった。

処理中です...