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第九章辺境の聖女
3.光の保持者
しおりを挟むこの世界には四大要素となる魔力が存在する。
精霊の長を務める四大精霊を指していた。
水、炎、風、土の要素だった。
それらの要素と対等となる特殊な属性が光となる。
攻撃力こそ弱くとも癒し魔法は最高レベルだった。
魔を浄化し、封印することもできる特異稀な能力で、初代聖女も光魔法を使って魔を封じていたと聞かされている。
殆ど伝説となつていたが、光魔法を持つ者は女神の加護を得ているといつしか言われるようになり。
現在では光魔力保持者は特別だった。
ただし、光魔力を持つ者は世界に一人だけとされており。
現在光魔力を持つのはアリスだけのはずだった。
‥‥にもかかわらず、同じ光の魔力を保持しているのはおかしいのだ。
「どういうことかしら」
生徒会室にて、エステルは調べ物をしていた。
気になったので噂の転入生を調べていた。
伝説では聖女が君臨しない時代でも光の魔力を持つ人間は一人だった。
「アリスは光の魔力を持っているのに」
同時に二人存在するなんて聞いたことがない。
逆行する前の記憶を思い出すが、当時は世間と隔離されている状態だったので欲しい情報を得ることができない。
「光の魔力ではなくそれに近しい魔力と言うことかしら?」
思考を巡らせながら思い当たる節があった。
(確か浄化能力を受け継いだ者はいたわ…)
記憶の片隅に封印されていた辛い記憶だった。
そうエステルの身近に光の魔力に似た魔力を持つ者がいた。
「確かヘレンも癒しの魔法を使えていたはず…」
まだ五歳にも満たない頃。
ヘレンは精霊の恩恵を受けたのだ。
ただし癒しの魔法と言っても治癒師程度の魔力で宮廷魔導士に通用する程の魔力ではなかった。
それでも元両親は幼い内に魔力に目覚めたヘレンに大喜びし、勝手に盛り上がり未来の聖女になるだと豪語していた。
そのやり取りをただ見ているだけだったが…
当初、光の魔力を受け継ぐことはなくとも治癒師の才を持つ子供は何人もいたのだ。
ただヘレンは、他の子供よりも魔力に目覚めるのが早かっただけにsぎなかったのだが、当時エステルは体の弱さから魔力に中々目覚めずにいたことから元両親に魔力を授からなかった悪絶たずのレッテルを張られていた。
ただ時期が遅かっただけなのだが…
(あの時は気にも止めていなかったけど)
光の魔力を受け継がなくとも似たような魔力を受け継いでいるのかもしれない。
もしかしたら、今生で二人の光の魔力を受け継ぐ者が現れた可能性がある。
「後でアリスに聞いてみようかしら」
クラスはアリスと同じはずなので、話を聞くこともできる。
科も同じだし、面倒見のいいアリスはきっと転入してばかりの生徒の面倒を見てくれているだろうと思い、昼休みまで待つことにしたのだが…
パリン!
「え?」
生徒会室に置かれているカップに皹が入る。
「おかしいわね、新調したばかりなのに」
全員おそろいのティーカップは数日前に購入したばかりだった。
お気に入りで、生徒会役員全員はこのカップを愛用しているのだが、何故かエステルのカップに皹が入っていた。
「危ないわね…」
間違って使ってしまっては大変だと思い、その時は特に気にしなかったのだが。
「あら?さっきまでいいお天気だったのに」
太陽が隠れすっかり暗くなり雨が降り出し始めた。
「ミシェル様の占いが外れるなんて珍しいわね」
今日一日は晴れだったと聞かされていたので少し違和感を感じながら、エステルは書類を片付ける。
昼休みは生徒会がそろって生徒会で昼食を取る予定なのでお茶とお菓子の準備をして出て行く。
その陰で誰かが見ているとも気づかずに。
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