ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第八話父と娘、愛の死闘

31.王妃からの贈り物

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見習いとしての実習を終えたエステル達はエステル達は明日の朝、学園に戻ることになった。


婚約式を行い、卒業したら席を入れる形になっていた。


ジェームズとガブリエルは引退をして、公爵家をロバートに継がせる旨を会議で伝えた。

会議では、賛否両論となったが、リュミエール公爵家の後押しで事なきを得た。
元より、二人の年齢から言ってもいい加減現役を退き引退すべきだと言っていたのは貴族派だったので文句の付け所がなかった。

ただし彼等の言っていたのは、ロバートに後を継がせるのではなく、アルスター家の権威を落とす為に言っていたにすぎないのだが、中立派の貴族からも信頼が厚いロバートを推す声は大きかった。

何より王族暗殺事件で貴族派は弱体化の一途を辿っていたことも一つの要因となる。
会議ではリュミーエル公爵家、メサイヤ伯爵家を筆頭に話し合いが行われ外堀を埋められ反対剣は全て握りつぶされてしまった。


影にこの二人が背後バックについていることを念押しした後に。
貴族派の知らない場所で、ガブリエルとジェームズは表舞台から姿を消すと同時に、彼等を探るべく本格的に隠密行動を行う算段になっていたことを知る者は少ない。

あくまで楽隠居をするとのことだった。


「新体制となり、これからも期待しておりますわ」

「はい、お任せください」

「特にバルトーク公爵にはね?」

「光栄ですな」

表向きは忠誠心を誓っていながらも腹黒いことを考える狸親父に怪しく微笑む王妃。
モントワール侯爵夫人の警戒心を怠らず冷たい笑顔を浮かべていた。


優れた政治家たるもの常に腹の探り合いをしていかなければならないのだが、この空気の悪さにげんなりするエステルは居心地の悪さを感じていた。


王宮や社交界は魔の巣窟と言っていた言葉を改めて身を持って知る。


「エステル嬢…いいえ、エステル」

「はい」

「卒業し、貴方がエドワードの護衛騎士て戻って来る日を待っておりますわ」

「王妃殿下」


全ての話し合いが終わり王妃は明日旅立つエステルに言葉をかける。
そして今回、活躍した彼等にも労いの言葉と一緒に勲章を授与することになった。

「貴方達も励むのです。いずれこの国を背負う者として」

「「「はい!」」」

王妃の言葉に感激する彼等。
約一名を覗いてだが。


「いや、俺はいいんだけど」

今回の実習で最も貧乏くじを引かさせられたユランからすればようやく解放されると思っていたのだが、彼の願いは儚く散ってしまう。


「貴方達には薔薇の勲章授けます」

「「「薔薇の勲章!」」」

平民でも知っている薔薇の勲章。
それはすなわち、王家直属という意味合いを持っている。

古の時代より王が花を授けるのは絶対の信頼だった。
特に国家の薔薇を与えるということは、王の絶対の信頼を約束されたものだったのだから平民のアリスにサブローとジークフリートからすればありえないことだった。


「貴方達を私達は信頼します。彼等に薔薇の勲章を」


官僚達が薔薇の勲章を出しだす。


「それからもう一つ。ユラン」

「なんですかね?」

「貴方に我が国の親善大使の役目を授けます」

「は?」


ユランはさっきまで他人事のように考えていた。
願わくば、どうにかして断ろうと思っていた矢先に差し出されたのはもう一つの勲章だった。


「ちょっと待った!何で紅薔薇勲章が!」

薔薇の勲章とは別に与えられる特別な勲章にユランは狼狽えた。


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