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第八話父と娘、愛の死闘
閑話1見守り隊
しおりを挟む時を遡ること、エステルはまだ深い眠りに入っている頃のこと。
エステル親衛隊はひっそりと動いていた。
「今こそ私達が動くときですわ」
「ええ」
リズベットはエステルが負傷して眠っている時こそ絶好の機会だと言って貴族派が派手に動くのではないかと疑っている。
現に、この騒ぎに乗じてエステルを始末しようと考える貴族派は多いだろう。
「正々堂々と戦うエステル様に手を出すなんて許せない」
「万死に値しましてよ」
普段大人しいサティーも目の色が染まっている。
エステルを慕う故に、非道な行いを繰り返し、先日の王族暗殺事件の出来事を聞いた時は失神しそうになった。
真相を探るべく三人は団結してそれぞれ調べてみた所、すべては貴族派が実権を握りたいがための行動だと知り激怒した。
「エステル様は王族の為に尽くしておりますのよ」
「公爵家の娘として許せませんわ…もう許しません!」
扇を片手で握りつぶし、粉々になる音がる。
それほどにリズベットは怒っていたのだ。
「あの鬼畜が去って、ようやく穏やかにお過ごしいただけると思ってましたのに!」
「ええ、あの馬鹿女がいなくなったと思えばこれですか」
「本当に不愉快です。エステル様は今生の聖女様ですのに」
三人はエステルこそが今生の聖女ではないかと思っていた。
元より聖女としての品格を持ち合わせていたこともあるが、理由はそれだけではない。
「あの時、エステル様と聖女様の姿が一つになりましたわ」
「ええ、光の柱ですわね」
ロバート殿最後の一騎打ちの時、光がエステルに憑依した瞬間三人は確かに見たのだ。
聖女エルキネスと重なるのを。
「貴族派にとって、困るでしょうね」
「ええ、王族派の力が強くなりますから」
王族を抑え込み、自分達が実権を握る為にはアルスター家は邪魔でしかない。
エステルを生贄にして王族を傀儡にして貴族派が国を乗っとるつもりだろうが、貴族が国を支配すればその末路は安易に想像がつく。
「貴族が国を動かすなんて秩序を壊すようなものですわ」
リズベットは、この世界の秩序を壊しかねない貴族派の所業をこれ以上黙認できずにいた。
「エステル様は、王太子殿下の傍付き護衛となる覚悟をされております」
「あの方は、貴族派の悪意をご自分に向ける気ですわ」
「そんなことさせません!」
エステル一人にすべての荷を背負わせはしない。
王族派貴族として王族を守るの役目を放棄する気は無いのだから。
「神の代理人たる王をお守りするのが我らの役目」
「その役目を私達の果たさなくては」
「そうですわ!私達でエステル様をお守りするのです!」
この騒ぎに乗じてアルスターの権威を落とし、社交界では爪はじきにしようと考えているモノは多い。
親子が剣を交える行為はお世辞にもいいとは言えず、むしろ恥だと考えるのが当然だった。
ならばそこちらは逆手を取って醜聞を潰してやろうと思った三人は行動に出る。
「私達で貴族派を潰します」
「ええ、私達でエステル様のお守りしましょう」
「我等見守り隊の底力を見せてやりましょう!」
こうして三人は協力し合い、貴族派からエステルを守るべく動き出したのだった。
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