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第八話父と娘、愛の死闘
25.魔力
しおりを挟む同時刻、ミシェルが花束を持って病室に向かっていた。
「綺麗な薔薇だわ」
「花なんて同じだろ」
「本当に感性の無い男ね」
隣にはお菓子の詰め合わせを持つユランも一緒だった。
未だに意識が戻らないエステルが一日でも早く目を覚ますように一番好きな赤い薔薇の花を花束にしてお見舞いに来たのだ。
「まぁ、傷は塞がってんだし問題ないだろ」
「アンタねぇー…」
その時だった。
爆音が響く。
「きゃあああ!」
「わぁぁぁ!」
二人は猛吹雪に襲われる。
「私の薔薇が…薔薇が!」
猛吹雪の所為で薔薇の花びらが散ってしまう。
「薔薇よりも、当たり全体真冬になってんだろうが!」
「うるさいわよ!私の薔薇が!」
「つーかエステルの病室からだよな」
二人は常にトラブルを招くエステルに嫌な予感がする。
「まさか、何かあったの?」
「とにかく急ぐぞ!」
二人はエステルの身に何があったか不安になり病室に急ぐと、部屋で見たのはありえない光景だった。
「エステル…って、何やってんだアンタ達」
「どうしてお二人が土下座をしているのかしら?」
ガタガタ震えながら正座をして土下座をする王子殿下二人に訳が解らない。
「あら、お二人共ごきげんよう」
「ああ…じゃねぇよ!」
「アンタ、何やってんのよ!」
目が覚めたと思いきや魔力が爆発している。
病室内が白銀の世界になっており、ミシェルは怒った。
「病み上がりで魔力使いまくってんじゃないわよ!アンタ死にたいの?」
「え?」
無意識だったのか、ユランの方を見ると…
バキッ!
「わぁ!」
氷の矢が放たれる。
「お前!俺を殺す気か!」
「そんなつもりは…」
無意識に魔力が膨れ上がりさらに状況は悪化する。
「ちょっと!何魔力をさらに使ってるのよ!」
「それが、勝手に…コントロースが上手くできず」
「とにかく押さえろ。俺が凍死する」
ユランに近づこうとすると、足元が凍りついて行く。
「あら」
「頼むから、魔力をとめてぇぇぇ!」
既に膝まで凍りだす。
このままでは色んな意味でユランの体が危なかった。
「エステル、アンタは水と風だったはずなのに」
「はい、ここまで強い氷魔法は使えなかったのですが」
以前とは桁外れの魔力を上手く制御できずにいたエステル。
「寝ている間に何かあったんじゃないかしら」
「自分では解りかねます」
「とりあえず、垂れ流すのは止めなさい」
ミシェルに魔力を抑え込むのを手伝ってもらいエステルはなんとか魔力の暴走を抑え込むことができたが、問題は魔力だけではなかった。
「ちょっとエステル、アンタ、そんなに髪が長かった?」
「あっ…本当だわ」
髪の毛が少し伸びているように見えた。
いきなり大きくなった魔力と伸びた髪に驚きながら、外から足音が聞こえる。
「エステル!!」
「お父様?」
「良かった、目覚めた…うっ!」
首につけられている首輪が絞まり床に頭をぶつける。
「ロバート、勝手は許しませんよ」
「母上…」
ガブリエルがロバートを足蹴りにしてにっこりと微笑んでいる。
「お祖母様…」
「目覚めたようですねエステル」
「はっ、はい」
よく見るとズタボロのロバートは顔にも包帯を巻かれている。
まるでアンデッドのようだった。
「ああ…良かったエステル!」
「お母様」
エステルの目覚めに涙を流しながらも強く抱きしめる。
「本当に心配したのよ」
「ごめんなさいお母様」
今回の決闘で一番辛い思いをしたのは夫と娘の死闘を見守るしかなかったヴィオラだった。
泣きながらお説教をされるのだった。
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