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第八話父と娘、愛の死闘
23.夢から覚めて
しおりを挟む頬に当たる光が眩しく、ゆっくりと目を開く。
「エステル!」
目を開ける傍にはエドワードがいた。
「エド様…」
「良かった、目が覚めたんだね」
どうしてエドワードがいるのかと驚く。
「クロード様?」
傍では眠っているクロード。
「兄上はずっと君につきっきりだったから」
「申し訳ありませ…」
すぐに起き上がり頭を下げようとするも体に力が入らなかった。
「無理をしないほうがいい…傷は塞がっても体は自由に動かないだろう」
「ご無礼を…」
「いいから」
エドワードはエステルを支える。
ふと、エドワードの胸元から見えるのはペンダントにしている鍵だった。
(これは…)
黄金の鍵で太陽がモチーフにされている。
「顔色はいいみたいだね」
「はい」
「本当に心配したよ…君は無茶をするから」
少し怒った表情のエドワード。
本当にエステルを心配しているようにも見えるが、以前のエドワードは本当に穏やかな性格で感情をあまり表に出さなかった。
「君と兄上の婚約は女神様の元でなされた」
「え?」
「あの後、王家のカリオンが鳴ったんだ」
「カリオンが!」
王家に伝わるカリオン。
それはお告げや信託と同じで女神からのお告げだった。
「カリオンが祝福した以上、反対できないだろう」
「はい…ですが」
貴族派はそれでもあることないことを言ってくる。
今回の一件でエステルとクロードの仲は公にすることはでき、尚且つ正式な決闘に置いてエステルは勝者となった。
エステルの願いはクロードと正式に結婚することだったので、ある程度の野次馬を抑え込むことはできるが、高位貴族を簡単に認めるとは思えない。
「例え君達が夫婦になっても兄上に側室を進めて来るだろう…だが、そうならないように先に手を打たせてほしい」
「どうされるのです?」
「皇女を迎える前に君達には結婚してもらう」
「はい?」
アントワネットとの結婚式までにとなれば、時間があまりにも少なすぎる。
どの国も王族の結婚式は準備期間に一年以上を有するのが当然だったのだが、これは異例中の異例ではないかと驚く。
「言い方は悪いが、今回の事で焦っている貴族派は多いだろうからな」
「ですが…」
「外野の声は僕が抑え込む」
副音声が聞こえた気がする。
抑え込むとは言っても穏便に事を運ぶのではなく脅迫して何が何でも納得させるつもりだろう。
「君が決闘をしてくれたおかげ王宮はからっぽになってね…素敵な掘り出し物を手に入れたんだ」
懐から見せたのはリストだった。
「これは?」
「貴族派達の横流しした証拠」
「は?」
あの騒ぎに乗じてそんな真似をするなんて、普段のエドワードならばありえない。
王宮内にある貴族派達の部屋を家探しするなんて下手をすれば罪に問われる可能性があるというのに。
例え部屋の主が留守でも侍女が提起しているはずだ。
「まさか…」
「内容は秘密だよ」
何時の間にこんなに真っ黒になったのか。
少なくとも逆行前のエドワードは優しすぎる性格が災いしていた程だ。
現在も王太子として駆け引きはできなくとも優秀な程度だった。
他人を踏みつけ賢く立ち回る程の能力はなかったと思ったが、どうにも違和感を感じる。
(エドワード様はこんな方だったかしら?)
幼少期に会った時も感じたことがある。
エドワードは幼少期時代は内向的で人と話すのも苦手だったが、サロンで会った当初も社交的だった気がする。
「うっ…」
「兄上、風邪を引きますよ」
「エド?何でお前がいるんだ…エステル!目覚めたのか!」
思案するエステルはクロードの目覚めによりそれ以上考えることができなくなった。
「中々目覚めないから心配したぞ!」
「申し訳ございません」
「兄上、病み上がりの女性にはもっと気を使ってください」
エドワードがクロードを窘めると機嫌が悪くなる。
「何でお前がいるんだ」
「医師を手配したのは私です。それに兄上が万一に出も彼女を襲った時の為に待機しておりました」
「おまっ…!!」
いくらなんでもそこまで言うかと、怒りを覚える。
エステルを支えているエドワードが気に入らず、睨む。
「余裕がありませんね。そんなのでは義姉上に捨てられますよ」
「「は?」」
「何を呆けているのです。二人はめでたく婚約を結ばれたのですから‥結婚したら僕の義姉上になるのですから」
言っていることは間違いではないが改めて言われると恥ずかしくなる。
「エド…」
「気持ち悪いですよ兄上」
「お前は俺を何だと思っているんだ!」
余りにも酷い言い草に泣きたくなるクロードだったが、エドワードは焼けに塩対応なのにさらに疑問を抱くのだった。
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