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第七部可憐な皇女と聖騎士
29.迎賓館
しおりを挟む迎賓館。
そこは、他国の勅使を招く部屋。
元は質素な部屋であったが、モントワール侯爵夫人が王の威厳を示すべく湯水のようにお金を使い豪華絢爛に作らせたものだった。
「なんと煌びやかな」
「勅使を招く部屋が質素ではした目に見られるとのことだ」
「流石モントワール侯爵夫人」
ミシェルとは政治家として右に出る者がいないと手をそろえてありがたがる。
「センスも素晴らしいですわ」
「しかし、これだけの部屋を作るのに税は…」
ジークフリートは税金を無駄に使っているわけではないので批難はしないが、国民の負担があまりにも多すぎると思っていた。
「お前の言うのも最もだが、必要な費用だ」
「そうよ、国の威厳を他国に占めすには公的なお金ですもの」
かなりの赤字であったが、それに見合うだけのものは戻ってきている。
敵国や他国にアルカディアはこれほど財力があると知らしめることで貿易や、戦争回避にも繋がるのなら安かった。
「お褒めの事をあずかり光栄ですわ」
「「「わぁぁぁ!」」」
背後から現れたモントワール侯爵夫人に驚く。
「どうやって!」
「ドアは閉まっていますが…」
気配も感じなければ、外から入って来た形跡はないのに何故?と思った一同。
「ええ、入って来たのはここですわ」
ドンっ!と壁を叩くと一部だけくるりと壁が動く。
「これは」
「隠し扉ですわ。元は私の部屋でしたのよ」
「いや、何でそんなもんが!」
ユランは壁のいたるところに仕掛けがるのに気づく。
「緊急用の出口ですわ。部屋の外から火をかけられたり、刺客から逃げるのにも有効でしてよ?」
「刺客…」
「地味でさえない血筋だけの女はやることが同じですのよ」
優雅に微笑みながらも、得物をみるような目をしている。
「怖い…」
「これが寵妃ですか…」
「恐ろしいとね」
平民出身は愛妾がどのようなものかは深く理解していない。
ジークフリートは知識で走っているが女の園なんてものは未知の領域で、基本は純情なので知るはずもない。
「お前等馬鹿だろ?女ってのは男よりも恐ろしい生き物なんだよ」
「え?」
「一人の男を奪い合う過程で恋敵を噂で蹴落とし、時には殺すが自分の手は汚さない」
淡々と告げられる言葉にゾッとする。
ユランは事細かに修羅場の世界の愛憎劇を語る。
「特に身分だけ高い女は自分より低い身分の女をあの手この手を使う」
「流石ユラン、ただ女性をおいかけるだけでなくちゃーんと理解していますわね」
「お褒めのお言葉光栄ですよ」
嫌味を嫌味で返すユランは、経験値が上がって来た。
補佐役になってからというもの、女の愛憎劇も目の当たりにするも増えたなんて口が裂けても言えなかったのだ。
純情な友人達にはあくまで大人の経験値故にあるのだ言った。
「愛憎劇は後々お教えするとして」
「はい」
モントワール侯爵夫人はクロードを見てため息をつく。
「今後のことを話し合わなくてはなりません」
「侯爵閣下のことですね…って、ちょっとアンタ!」
深刻な話をしている最中、一人だけ空気を読まない男がお菓子を食べていた。
「さっきからお菓子ばっかり食べてんじゃないわよ!」
「何をする!」
ヒューバートのクッキーを奪うミシェル。
「今は大事な話し合いをしているのよ」
「魔力を使って体力を消費した…糖分を摂取しなくてはならん」
「あんなしょぼい魔力で体力無くなるってどんだけよ!本当に役に立たないわね!」
極端に魔力が低く、本当に役に立たないのに偉そうなヒューバートだった。
「ミシェル殿、構いませんわよ。彼緒功労者ですもの」
「モントワール侯爵夫人がそうおっしゃるなら」
敬愛するクロードの母が言うならばこれ以上何も言えなくなるミシェルは押し黙った。
「それで、今後の事ですが…エステル嬢」
「はい」
「どうお考えです?」
今、話し合うのはクロードとのことだった。
「報告は聞きましてよ?今頃ガブリエル様のお部屋でお説教中です」
「お説教中…ですか」
想像したくない。
ガブリエルほ厳格な性格だったので怒らせると容赦ない言葉で責められる。
「エステル嬢、ロバートは貴方とクロードとの仲を認めるでしょうか?」
「難しいかと」
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親子と解ってからもエスカレートし、外に嫁に出すよりも婿を迎えるならばと泣く泣く結婚も許したが、それは当分先の話と思っていたはずだ。
なのにこんな事態となれば納得なんてするはずがない。
むしろ力の限り邪魔して来る可能性が高いのではないか?とさえ思った。
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