ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第七部可憐な皇女と聖騎士

27.母のお仕置き

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結界を外側からコーティングするもう一つの魔力はロバートの魔力を無効化した。

そのおかげで氷は全て溶けてしまった。


「すごい…なんて高位魔法だ!」

「ええ」

セスとエーファは驚きながら感動していたのも束の間。


「ハーハッハッ!どうだ見たか!この華麗なる妙技を!」

緊張感を一瞬で消し飛ばしたのはヒューバートの馬鹿笑いだった。


「あの馬鹿を黙らせなさい」

「「「了解ラジャー!」」」

「何だお前達!何をする!」

そこに現れたのは何時もの顔ぶれだった。


「何故馬当番がいるんです」

「いや、アイツは倉庫番じゃなかったか?」

ヒューバートに対する正騎士の認識は見習い以下で、一般騎士所か衛兵の見習いよりも下に見られていた程度だった。


「こいつのスキルの一つよ、魔力をちょっとだけ弱められるの」

「はぁー…」

ちょっととはどの程度なのか、一応聞いてみると。

「ミジンコぐらいよ」

「ミジンコ…」

取るに足らないスキルだった。

「まぁ、そのおかげでアリスが光魔法結界を敷いて、私がロバート様の魔力に亀裂をいれられたのだけど」

ないよりはマシだが役に立ったようだった。


「フハハハハハ!感謝するがいい」


「こいつ、どんだけ偉そうとね」

「こんな人と同期と思われたくないですね」

どこまでも偉そうなヒューバートにサブローとジークフリートも呆れて物も言えない。


「当分はなんとかなると思います」

「ルーク、貴方も来てくれたの?」

「もちろんです」


ここに一同が集合した。


「まったくなんと馬鹿な息子なのか。私は恥ずかしいですわ」


「お祖母様!」


暴走した息子を蔑むような目で見るガブリエル。
普段の笑みは消えて眉間に皺を寄せている姿はもはや鬼のようだった。


「おい、侯爵閣下殺されねぇか?」

ユランがふと零した。

「怖いことを言わないでくれるユラン?いくらなんでもお祖母様が…」

そんなことをするはずないと言いそうになるが、言葉を飲み込む。

「アンタ一瞬迷ったわね」

ミシェルはエステルの表情を見逃さなかった。

「エステル現実を見ろ」

「クロード様まで…」

合理主義者であるガブリエルは例え息子でも容赦がない。
クロードはエステルが王都を離れている間嫌と言う程理解させられたのである。


「あの女は鬼なんて可愛いものじゃない」

「殿下に不敬ですが…僕も否定できないです」

「恐ろしか」

クロードに賛同してしまうルークにサブローもガブリエルの恐ろしさを目の当たりにしているので何とも言えない気分だった。



「母上!これはあんまりではありませんか!」


現場では既に拘束されているロバートは母親を睨む。

「貴方は我を失い魔力を暴走させました。それで近衛騎士の団長が良く務まりますわね?ちゃんちゃらおかしいですわ」


(((酷い!!)))

慈悲の欠けらもないガブリエルの一言はあまりにも冷酷だった。


「くっ…」

「私はそんな子に育てた覚えはありませんわ。殺るならもっと確実になさい」


「「「は?」」」

静観していたメンバーは耳を疑った。
ガブリエルはさらりと恐ろしい言葉を放ったのだ。


「公爵夫人、それはあまりにも…」

ミシェルが声を放とうとしたが即座に睨まれる。


「何か?」

「申し訳ありません!何でもございません」

速攻で頭を下げは発言を詫びるミシェルは悟った。
逆らえば確実に消されると。


「さて、私はこの馬鹿とお話がありますので失礼しますわ」


「はっ…はぁ」

「母上!」

ロバートは抗議しようとするも、パチンと指を鳴らすと、拘束していたロープがツルのように動き口を塞ぎ叶わなかった。


「では皆さん、ごきげんよう」

そのままロバートの首を掴みズルズルと連行して行った。


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