ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第七部可憐な皇女と聖騎士

25.ブランコとパイン

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仕事を終え、エステルは秘密の場所に向かった。


「ふぅー…」

ブランコに乗って一息つく。

「いると思ったのに」

ここはクロードとエステルの秘密の場所になっていた。
勝手に待っていてくれていると思ったが、よく考えると常に激務に追われているクロードが来るはずない。



「クロードの様の嘘つき」

待っていると言った言葉を思い出しながら悪態をつく。

知らない間にクロードに頼り切っている自分がいるのに反省する。

(何を考えているのよ!)


自立するべくこれまで己を律して務めていたはずがクロードがいなくては何もできないなんて恥だと思う。

「私は自立した女性になるのよ」

「ほぉ?俺を放置してか?」

「そう…え?」

背後から音もなく現れたのはまたしても神出鬼没のクロードだった。


「きゃあ!」

ブランコの紐を掴みバランスが崩れ椅子から落ちそうになるエステルを抱きとめる。


「危ないではありませんか!」

「そうか?」

危うくブランコから落ちてしまいそうだったというのに悪びれることもないクロードにエステルは怒る。


「いい加減放してください」

「却下」

「ちょっ‥何処触っているんですか!」

エステルを抱き上げながらどさくさに紛れて抱きしめながらセクハラ行為をする。


「ちょっ…止めてください」

「無理だ。欲求不満だ」

「この変態!」

本気で嫌がるも器用にボタンを外されてしまうエステルはなんとか逃げようとする。

だが、逃げようとすればするほど逃れることは叶わず、クロードの膝の上に座らされる。


「何故膝の上…ひゃあ!」


「久しくお前を堪能したい」

「ちょっ…おやめください!」

首筋にキスをされ、吐息が耳にかかりくすぐったくなる。


「三日間むさ苦しい護衛と、性悪の侍従に監視され執務室に缶詰めだったんだ」

「は?」

「だから俺を癒せ」


言っている意味が解らない。
癒せと言いながら手を出してくるクロードの意図が理解できないエステルは抵抗を続ける。

「クロード様、健全な御付きをしてくださいませ!私達はまだ婚約者で…」

「だから健全だろうが?」

「何処がですか!」

貴族の婚約者とはキスはしてもそれ以上の行為はしない。
クロードは既に健全なお付き合いの部類から遠く離れていたのだが…


「父上は既に俺ぐらいの年齢には花街で遊び倒していたぞ」

「…陛下」


あの親にしてこの子供。
間違いなくクロードは王の血を受け継いでいると思った。

「言っておくが俺はハニートラップにかかる馬鹿じゃない」

「それを言いますか」

「母上の誘惑にコロリとやられる程俺は女に飢えていないぜ?これでも一途な方だ」


言葉では真っ当なことを言いながらもその手はエステルの制服をめくり始める。

「言っていることと行動が違います!」

「いい加減慣れろ。その内、それ以上のことをするんだぜ?」

「それ以上?」

まったくもって理解していないエステルにクロードは悪戯心が芽生える。
ここでエステルを困らせるのも楽しいと思い、耳元で囁き、事細かにのことを話した。



「いやぁぁぁ!!」

「夫婦なら当然だ。自然の摂理だ」

「信じられない!」

朝っぱらからセクハラ行為を連発され、あげくの果てに異性から男女の行為を詳しく聞かされ悲鳴をあげる。

これ以上聞きたくなかったが、クロードは呆れたようにさらに続けた。

「お前、子供はキャベツから生まれるとか思っているんじゃねぇだろうな?男と女の営みでできるに決まっているだろうが」

「それぐらい知ってます!」

「その割には疎いよな?」

知識だけで知っているに過ぎないので反論できなかった。


「俺は王位を継ぐ気は無いが、子供は出来るだけ多く産んでくれ」

「こどっ!」

真っ赤になるエステルは本当に擦れていない。
ここまで予想通りに動揺してくれれば揶揄い甲斐があるとさらに悪戯心に火が付きエスカレートしていく。

「なんだったら、一線を越えて見るか?」

「へ…」

エステルのシャボを口で銜え解く。


「クロード様!」

「このままだ…」

ゆっくりとした動作に体がビクつく。
シャボが解かれる音が聞こえさらに体が火照り、クロードはそっと唇をよせる。


(ダメ…こんな場所で!)


人気のない秘密の場所は滅多に人が取らず、誰も入ってくることがない。

このままクロードにされるがままなのかと思った最中、頬に何かが掠めた。

「ぶっ!!」

クロードの顔面にクリティカルヒットしたのは南国果実のパイナップルだった。





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